「ヘッドバンキングしただけで警備員に注意されるコンサート」LETO レト kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘッドバンキングしただけで警備員に注意されるコンサート
『ブラッドショット』に続いてまたもやトーキングヘッズの「サイコキラー」!「セックスピストルズみたいな西側の音楽を聴くな」という台詞に対して「彼らは労働者階級。敵じゃない」と反論する若者たち。ソ連時代の窮屈な音楽環境の中でも、レコードを聴くくらいは許されてたみたいだけど、反体制の内容だと処罰される。しかし、確実に西側音楽は浸透していた。
聴いている音楽はビートルズ、ストーンズ、ボウイ、T-REXその他もろもろだったのに、ヴィクトルにしてもマイクにしても演奏している音楽は日本の70年代フォークを彷彿させるアコースティックな世界。ただし、ラブソングなんて甘っちょろい歌詞はない。若いながらも人生のわびさびを切々と歌っている雰囲気があった。
ほとんどが70年代ロックのカバー曲と彼らの音楽で構成されているのですが、雰囲気はすっごく伝わってくる。マイクがリーダーをつとめる人気バンド「ズーパーク」もかなり影響を受けているものの、ロック未発達のソ連ではやはり音響は大人しく、コンサートでは立つことも許されない。まるでクラシック音楽コンサートのように・・・
気になったのが、バンド活動をしていても生活基盤の職業をちゃんと持っていること。言ってみれば、社会人バンド、学生バンドみたいなものだ。レコーディングスタジオだけは本職のスタッフがいるようだったけど、音はやっぱりプロを感じさせなかった。逆に、アマチュアだからこそメッセージを伝えるたり、訴えるものがあるというもの。商業主義に走らない音楽はむしろ新鮮なのです。
自分がバンドやってた頃と同じ時期だし、音楽的にはかなり共感。高校時代にエレキ禁止という不条理な校則があったため、フォークギターだけでロックを演奏するなんてところには懐かしささえ感じてしまいました。映像でもモノクローム実写にペインティングを施したポップなもので、フィクションだよ~と、ふざけているような映像も加わえてあった。
ラストの演奏、エンドロールの音楽は「キノ」自身のもので、さすがに素人感はない。そして、1962-1990という字幕がヴィクトルの夭逝を示しているんだと知り、悲しくなってしまった。やはり、多くのロックスターは27歳で死ぬ(ヴィクトルは28歳)という伝説は本当だったんだなぁ。