「ジャンルを飛び越えつつも「家族の物語」を追究するハートリーの創造性に感銘を受ける」フェイ・グリム ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャンルを飛び越えつつも「家族の物語」を追究するハートリーの創造性に感銘を受ける
97年製作のハル・ハートリー作品『ヘンリー・フール』には続編があった。その『フェイ・グリム』は長らく日本で見る術もないまま12年の歳月が流れ、そして今、ようやくスクリーン初上映を迎えることに。
この度、フタを開けてみて驚いた。なんと本作はジャンルを飛び越え、スパイ・スリラーと化しているのだ。それは9.11以降の激変する世相を濃厚に反映した物語。各国の諜報部がヘンリーの著した「告白」をめぐり熾烈な争いを繰り広げる中、妻フェイ・グリムは混沌の真っ只中に身を投じていく。
ハリウッド映画でスパイ物といえば「ジェイソン・ボーン」路線がすっかり定着化したが、一方、ハートリー監督の手にかかればこんなにも変わった映画が出来上がるのだ。そのオリジナリティに酔いしれると共に「芸術の価値、評価」が時代の空気や人の心の揺らめきによってこれほどまでに変化するのだという真理さえ、とことん突きつけられる一作である。
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