「バランス良くまとまっているがモヤモヤが残る」映画刀剣乱舞 M-Hishさんの映画レビュー(感想・評価)
バランス良くまとまっているがモヤモヤが残る
特撮好き殺陣好きのステ・ミュ・アニメ視聴済み審神者。
あらゆる面でバランス良く、まとまり良く、ライトに作られており、幅広い客層を取り込める内容と映像。「刀剣男士達を美しく撮る」姿勢を最後まで貫いてくれているのが伝わった。
しかし、公開前の脚本家の言「萌えはないが燃えはある」に期待していたのだが、「驚き」はあったものの「燃え」がなかった。
登場人物達の葛藤や苦悩、情熱、衝突といった要素が薄く、ストーリーはクライマックスがはっきりしない。
殺陣は、印象的なシーンは幾つかあったものの、全体としてどういう動きをしているのか見え辛い。また、ここが山場の殺陣シーン、という盛り上がりがないため、すっきりしなかった。
ラスト付近の展開と演出は、戸惑いと疑問と違和感を感じてしまい、鑑賞して沸き立ったというより、映画の世界から引き戻されてしまった。
キャラクター設定については、三日月が他の刀剣男士を信用も尊重もしていないように見えて、残念だが好感が持てなかった。信長への言葉遣いも、神なのに主でもない人間に三日月がへりくだるのは、新鮮ではあったが疑問を感じた。
他の刀剣男士では、例えば一度も「写し」というコンプレックスを見せず卑屈さがない山姥切、一度も「正三位」と言わずプライドを前に出さない日本号、一度も「大包平」と言わない鶯丸など、いずれもただただ格好良いキャラクターになっている。作品の焦点をブレさせない狙いはわかるが、せっかく登場を八振りに絞ったのに、七振りは原案のキモとなる部分が抜かれ、とっつきやすいが深みのない個性の描写に留められたのは残念だった。
全体として程々の匙加減で見事なまでに綺麗にまとまっている作品だったと思うが、熱い盛り上がりがなく、後にモヤモヤが色々と残った。とはいえ、俳優さん達が皆美しく刀剣男士を演じてくれたこと、それを美しく映像にしてくれたことには感謝を感じている。