「観念、堪忍作品」聖なるもの いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
観念、堪忍作品
全く観客が共感を覚えない、かなり独りよがりの作品。これをよくも配給したものだと逆に感心する。勿論、カタルシスもないし、哲学めいた格言や外国民話から抜き出したセンテンスを差し込んでいるが意味合いを深く印象づけしておらず、文章も長いので心に残らない。内容自体も冗長で、世界観だけ押しつけて訴えてくるものがない。作家性が強いといったら聞こえは良いだろうが、解釈が困難だと追いつこうと思っても諦めてしまう。
ストーリー的には早稲田の映研に所属している全く冴えない大学生が、このサークルの伝承である、4年毎に現われるという美少女に気に入られるとその少女を撮影することで自分の夢の作品を作ることが出来るという話に巻き込まれ、現われた女性を主演に制作するために、優秀な女性後輩の力を借りつつ撮影をしてゆくのだが、段々と雲行きが怪しくなり・・・という話である。かなりホラー要素も入っていたりするのだが、基本的には頭の良い大学の映研ではこんな活動していますよ的紹介フィルムに観ても取れる形である。映画内映画というメタ的構造なので、撮影主観がどんどん切り替わってゆくので、その辺りも混乱を来す原因かもしれないが、一応、ヲタク系の『冴えない僕に天使が降りてきた』プロットが先行しているのだろう。展開は後半急激にカーヴを切ってくるのだが、その繋ぎは悪くはない。寧ろそこからどう帰着してくるのかワクワク感も浮かんだのだが、一気にアクセルを踏み込んで観客を置いていってしまうラストへと。。。正にその伝説の呪いが掛かってしまったのは主人公ではなく観ている観客なのではと信じてしまうほどだ。巨乳が出たり、バックヌードがあったり、ミニスカからの太腿の舐めるアングル等、サービスカットが挟まれてはいるが、この意図も図りかねる。何だか闇鍋の様相を呈してて、この混沌、形而上学的世界観を表現したかったのだろうと思わないと観ていられない。フェフェリーニやトリフォーに感化されたのか、実はその、中二病的エネルギーを保ち続けて作品を生み出して欲しいと願う自分もいるのだ。観客に媚びない映画があっても良い。今作品は、観て直ぐの感想ではなく、何日も噛みしめながら、絞り出すような感想がピッタリな作品なのだろうと思う。ただ、まぁ、頭の良い大学の匂いは鼻につくので、消臭剤は必要かも・・・w