「期待に応える続編は、2020という年を結果的に代弁している」ワンダーウーマン 1984 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
期待に応える続編は、2020という年を結果的に代弁している
少女時代のダイアナがセミッシラで開催される競技大会で真実の重要性を思い知らされた後、舞台はドラスティックに転換して1984年のショッピングモールへ。そこで展開するもろ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をコピーしたようなアクションを堪能した観客は、ワシントンD.Cのスミソニアン研究所で人類学者として働く成長したダイアナが、それに触ると夢が叶うとされる"ドリームストーン"(レイダーズの聖櫃ですね)を巡る攻防に巻き込まれていく過程を目撃することに。第一次大戦下でナチスと対決した前作とは違って、本作は欲望の実現と、それに対して支払わなければならない代償の大きさがテーマ。それは、"ドリームストーン"を手に入れようとするヴィランを介して表現される。そして、ダイアナ自身も、また、ダイアナへの憧れが高じてパワフルなクリーチャーに変身してしまう同僚も、同じく欲望に屈した仲間である。そんな風に、色々考えさせられることが多い続編だが、ガル・ガドットの圧倒的な眼力と、泥臭さがある種の牽引力を生むパティ・ジェンキンスの演出力は健在だ。スティーヴを演じるクリス・パインのイノセントぶりも一層板に付いている。「WW1984」はハリウッドメジャー大作に飢えた映画ファンの期待を裏切らない続編ではあるが、唯一、公開が半年伸びたことが玉に瑕。ヴィランのキャラ設定と欲望の果ての姿が、去りゆく(当初の夏公開だとイケイケの)アメリカのリーダーを否が応でも彷彿とさせるからだ。まあ、それも含めて、また、ワーナーの驚くべき映画公開&配信システムも含めて、2020年という未曾有の年を結果的に代弁しているとも言えるのだが。