「ロマコメをセルフパロディしたロマコメ」ロマンティックじゃない? 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマコメをセルフパロディしたロマコメ
私はロマンティック・コメディが大好きだ。でもロマコメを好きじゃない人の気持ちも分かる。ストーリーはどの映画もほとんど同じでマンネリとも言えるし、ヒロインが男を掴まえて終わりというのもばかげているかもしれない。現実にはあり得ない絵空事だと、欠点を論おうと思えば出来る。けれど、私はあの王道のストーリーをいかに上手に表現するかや、王道ストーリーの中でいかにオリジナリティを出すか、王道を気持ちいいと感じさせてくれるか、みたいなところをロマコメに期待していて、男と女という世界最小の人間関係を描く人間ドラマなんだ、とはさすがに言い過ぎだとしても、そんなことを思うくらい好きなわけです。
この映画は、歴代のロマコメ作品のオマージュというかパロディが満載で、ロマコメ好きにとっては、このシーンはあの映画のパロディかな?このシーンはあの作品かな?なんて思いながらの元ネタ探しやロマコメあるあるを見つけるのもなかなか楽しい。取っ掛かりは「プリティ・ウーマン」ということにはなっているものの、コンセプト自体はケイト・ハドソンらが活躍していたような2000年台以降のロマコメ作品がベースになっているかな?という印象。
そんな感じで終始ロマコメをパロディしつつ物語は進んでいくわけだけれど、ロマコメを最大限パロディすることはつまり、ロマコメの王道を描くことであり、この映画も終盤にかけてはロマコメの王道に則って展開されていく。ただその部分がパロディになりきれておらず、ただ普通にただ普通のロマコメになって終わった、という感覚になってしまった。新しいロマコメをやっている風でいて、至って普通のロマコメに終わった感は否めなかった。
今やロマンティック・コメディもこういうセルフパロディに走らないと作れない時代なのかなぁと、ロマコメ好きとしては少々寂しい気持ちも・・・。ハリウッドのAリスト女優達も、ロマコメのヒロインよりも強くて逞しい女性をこぞって演じたがっている様子があるし、男性と恋をしてハッピーエンドなんて内容は現代の価値観にはそぐわないのも分かる。でも私はロマンティック・コメディってすごく洗練された映画ジャンルだと思っていて、軽妙洒脱で粋な作品群だと信じているから(だって「ローマの休日」や「麗しのサブリナ」などはロマンティック・コメディならではのお洒落さが溢れた傑作でしょ?)、そういうロマコメをハリウッドで(←ここ重要)もっと作ってほしいなぁと常々思っていた。
そういう意味では、仮にセルフパロディだとしても、ロマコメ好きの心をくすぐるような作品を生んでくれたことはうれしかったしありがたかった。