劇場公開日 2018年4月28日

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「東京マガジンの名物コーナーのような...」ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命 Parsifalの友人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0東京マガジンの名物コーナーのような...

2018年5月5日
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鑑賞方法:映画館

まず東京新聞の記事がこの映像作品を知るきっかけとなったことを申し添えておきたい。実際、映画館のロビーに貼られた本作の関連記事の中で一般紙は東京新聞だけだったが、そのことからも本作の性格が読み取れようというものだ。

「映画」を観るつもりの方には本作は勧めにくい。ドキュメンタリー映画といっても、どちらかと言えば本作はBBCなどが制作するような放送番組に近いからだ。そういう意味では私も期待を裏切られたところがある。本作は20名を超えるようなインタビュー映像を主体に構成されているが、それはあたかも最近流行っている製品やサービスの事例ムービーのようでもある。よく撮ったというようなスクープ性を感じる絵もなければ、マイケルムーアのような毒も突撃的な演出もない。主人公に対するリスペクトは溢れているが、その業績や人物を際立たせるようなエピソードや描写が明らかに不足しているのが何とも惜しい。

ちょうど2日前にペンタゴン・ペーパーズという劇場作品を観たばかり。視聴者の共感や感動を呼ぶためには、教科書的な作風では追いつかない。大衆に向けて問題提起するのに、膨大な史実の羅列は不要ということか。引用も証言も最小限で済むはずだ。I, Daniel Blake のように、ひとりの男の短期間の行動を描くだけでも大切なことは伝えられる。深刻な政治的問題に立ち向かうすべを提起できるということを、若い映像制作者も学んでいかなければならないのだろう。

本作の鑑賞にあたっては、日本語字幕の精度に関して留意されたい。あえて詳細は提起しないが、本来の意図と乖離した訳語が多数散見された。その影響をどの程度見逃すことができるのか?もし原語に忠実に字幕化されたなら、どれほどのインパクトがこの作品に加わったのか。

比較的若い制作者によってこの地味なテーマの映像コンテンツが世に出たことには敬意を表したい。
願わくば多くの方が自分の問題だと考えて劇場に足を運ばれんことを。

Parsifalの友人