「考えさせられる、だが不思議と爽快」龍の歯医者 特別版 kame-pukupukuさんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられる、だが不思議と爽快
テレビでの放映時に1度視聴していますが、久しぶりに動画配信サービスで視聴しました。原作は未読です。
龍が存在しているという世界で、その龍の歯の中には死んだ人の魂が存在していたり、その人の今際の際が垣間見える、というとても不思議な設定です。
龍や龍の歯医者の設定こそ不思議ですが、それ以外の部分ではかなり近代的な戦争や生活の営みが行われており、それについてもそこまで違和感なくマッチしているから不思議です。
主人公の野ノ子は、最近のアニメの主人公にしてはとてもまっすぐな性格で、見ていて応援したい気持ちになります。登場するキャラクターそれぞれの性格や行動に無理がないため、とても見やすかったです。
ベルのように、突然死んで、意図せずに黄泉帰りした人間と、野ノ子たちのように「いつか死ぬ」ことを受け入れている人間では、「死ぬこと」、「生きること」への向き合い方は異なるでしょうし、どちらが良い悪いという話でもないので、地味に考えさせられました。
映像部分については、さすがスタジオカラーといったところで、手書きの部分とCGの部分の違和感が少なかったです。また、殺戮虫などのとてもスケールが大きいシーンや、歯の上で虫歯菌と戦闘するシーン等もただ早いだけでなく、スピード感がありながらも見る側に分かりやすい作画になっていました。
また、最近のアニメのトレンドとして、背景がとても細かく描かれることが多いですが、あまり書き込まれていない背景がなんとなくこの世界観にも合っている気がしますし、あぁ鶴巻監督だな、と勝手に思ったりもします。
主人公の野ノ子の清水富美加さん、とても役にハマっていたと思います。
個人的には、これだけ作画や映像構成、ストーリーがハイクオリティなアニメを、鶴巻監督、脚本榎戸氏というコンビでまた見れたことが嬉しかったです。
人がたくさん死んでしまったり、生き死にについて考えさせられる物語ですが、自分としては、内容も映像も不思議と爽やかさを感じた作品でした。