「ジャッキー meets 007 or 007 feat. ジャッキー」ザ・フォーリナー 復讐者 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャッキー meets 007 or 007 feat. ジャッキー
本作を“笑わないジャッキー映画”と評した声があるが、これはジャッキー・チェンとピアース・ブロスナンのダブルキャストの作品だ。娘の復讐のために犯人を追う男と国家と組織のために犯人を炙り出す男。同じ目的を持ちつつも手を組むことのできない不器用さともどかしさ。ジャッキー meets 007と言うべきか、はたまた007 feat. ジャッキーという構成である。
一番の驚きはマーティン・キャンベル監督とジャッキーの親和性の高さだ。これまでもジャッキーはリアル路線のアクションを試みたが、今作はそれが最も良い形で表れた。中でも民宿でのアクションシーンは息を飲む迫力があるし、中盤の森林での1対1の格闘シーンには往年のジャッキーファンも満足することであろう。
だが、本作を単なる娯楽映画と思えないのは、無差別テロという昨今の世界情勢と多分にリンクする点である。本作のジャッキーもブロスナンも求めるところは平和という国家レベルのものよりも、もっと身近な家族や仲間との穏やかな生活にある。それが崩されていくテロリズムの非道さ、残忍さ。犯人側の動きが見えてくるシーンは驚くほど少なく、狙いや動機などが見えづらいのだが、故に理由なく誰が犠牲になってもおかしくない無差別テロの恐怖が漂い、バスの爆破シーンは鳥肌が立つほど恐ろしく描かれている。
終盤の大アクションも決してスカッとするお馴染みの“ジャッキー映画”ではないものの、エンドロール直前の“ある判断”にホッと胸を撫でおろしたのは私だけではないはずだ。
コメントする