「凄惨な運命に立ち向かう女性を見つめる静かなドラマ」マルリナの明日 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
凄惨な運命に立ち向かう女性を見つめる静かなドラマ
荒れ果てた荒野の一軒家で独り暮らすマルリアのもとにある男が訪ねてくる。男の名はマルクス、マルリアの貯金と家畜が目当て、後からやってくる仲間達の分まで食事を用意しろとマルリアに要求する。身の危険を感じたマルリアは食事に毒を盛って毒殺、マルクスの首を刎ねる。マルリアはマルクスの生首を持って正当防衛であることを訴えるため遠く離れた警察署へ向かうがマルクスの仲間の残党が彼女の後を追っていた。
ナシゴレン・ウェスタンなるコピーが躍る本作、確かにマカロニ風味の劇伴、すなわちトランペットが哀しげに奏でられたりするわけですが中身はあくまで現代劇。その渇き切った映像から血塗れの大殺戮を期待していましたがそれは全然見当違い。途方もない荒野を生首をぶら下げて旅するマルリアを静かに見つめる素朴なドラマでした。低予算極まりない作品ですが映像そのものはもちろん、ボロいバスが画面をヨタヨタと横切るさりげない風景にも音響がきっちり寄り添う非常に繊細な作風。マルリアの過去が殆ど語られないにも拘わらず、凄惨な運命に毅然と立ち向かうマルリアの深い悲しみがくっきりと浮かび上がる演出が印象的。監督は若手女性監督モーリー・スリヤで本作が長編3作目とのこと、他の作品も是非観てみたいと思いました。
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