劇場公開日 2023年10月6日

「☆☆☆★★ ミュージカル舞台だけ有って当然の様に、オープニング前に...」ホリデイ・イン 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0☆☆☆★★ ミュージカル舞台だけ有って当然の様に、オープニング前に...

2017年11月14日
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☆☆☆★★

ミュージカル舞台だけ有って当然の様に、オープニング前にバンド演奏により使用されるアービング・バーリンの楽曲が鳴り響く。
直前にうっかりと、観た人のレビューを読んでしまい♫チーク・トゥー・チーク♫の使用は知ってはいたが、♫ステッピング・アウト・ウィズ・マイ・ベイビー♫や♫シェキン・ザ・ブルー・アウェイ♫、♫ブルースカイ♫等の使用に驚く。
勿論♫イースターパレード♫も登場するだろうし…。
この後、♫君と踊る時♫まで使用されているとは思わなかった。『スイング・ホテル』と言うより、寧ろ『イースターパレード』じゃないか…と。

舞台1幕のクライマックスは、その♫シェキン…♫から♫ホワイトクリスマス♫の流れ。
ここまでで約1時間。

ブロードウェイの最新ミュージカルを、本場まで行かずともほぼリアリタイムで観られるとは、凄い時代になったものだ。
但し入場料の2800円は、少なくとも安くはない。
あくまでも最新の舞台を観られる価値としての値段だと思う。

これまでも何度か、舞台作品を映画館で観る機会が有ったが、なかなかこちらの満足感を得る事は無かった。

自分の好きな舞台が時折テレビで放送される機会が有るけれど、自分が実際に観た時の印象との違いに戸惑う事が多い。
舞台作品をスクリーンで上映するとなると、当たり前と言えば当たり前だが、クローズアップ等を駆使して作品の魅力を伝え様とする。
しかし、舞台の最大の魅力は、出演者と観客との【空間を共有する一体感】に有ると思っている。
客席に座って舞台全体を見渡し、出演者の熱を受け取る事で得られる一体感こそが大切なのだろう。
そこが1番の違いなのではないだろうか。

元ネタの『スイング・ホテル』は、第二次世界大戦中に製作された為に。作品の根底にひっそりと<ショーザフラッグ>の精神を忍び込ませている。
これはリメイクされた『ホワイトクリスマス』にも、朝鮮戦争が背景に見え隠れしていたのですが。このブロードウェイ舞台版には、それらの背景は皆無。
これは、『スイング・ホテル』が1942年製作に対し、何故か1947年の設定に変えられているからだろう。

ミュージカルは何故、歌い踊るのか?

これを説明するのは愚の骨頂とも言える。

何故、プロレスは相手の技をうけるのか?

あるいは!

何故、山に登るのか?に通じる。

とは言え。『スイング・ホテル』は記憶が確かならば、突然音楽が聞こえて来て歌いだすのは2曲だけだったと思う。
それ以外は音楽が鳴る理由がしっかりと有った。
でもこのブロードウェイ舞台版は。いきなり音楽が鳴り、歌い踊る方が圧倒的に多かった。
時代設定にせよ、絶対に間違いが無いと言えるアービング・バーリンの大ヒット曲を大量投与と。これはもう元ネタの『スイング・ホテル』の骨格だけを使った別の作品と言った方が良いのでは?と思いました。

『スイング・ホテル』で個人的に大好きな場面は♫ビー・ケアフル・イッツ・マイ・ハート♫でのアステアとマージョリー・レイノルズのエレガントなダンスシーンなんですが…。この舞台版ではエレガントなダンスとは言えないのが残念。
そして2幕のクライマックスとなると、『スイング・ホテル』を観た事の有る人なら知っている。アステアの世界遺産タップの♫レッツ・セイ・イット・ファイヤークラッカー♫へ!

………まあしょうが無いか〜!

何しろアステアに対抗できるダンスなど無理に決まってますからねえ。
もうハナっから勝負するのは諦め、アンサンブルに切り替えていたのは正解だと思う。

ミュージカルファンならば絶対に満足出来る事間違いなし。
でも興味の無い人には展開の速さにせよ、ストーリーにせよ、分からない事だらけだろうと推測出来る。
個人的にはなんだかんだ言いつつも、そこそこ楽しみましたよ。やっぱりミュージカルは大好きなので。
ルイーザ役の彼女がナンシー・ウォーカーを彷彿とさせるのも、その一因では有りますが。

(2017年11月13日 東劇)

松井の天井直撃ホームラン