「ほんの少しの勇気」エブリシング R41さんの映画レビュー(感想・評価)
ほんの少しの勇気
エブリシング
このタイトルに表現された「すべて」とは何だろう?
「RUN」に似た設定で少々驚いたが、これはまったく違う味付けになっている。
免疫不全症(SCID)
18年も外に出たことがない少女マデリン
読書と書評投稿 そして宇宙世界をモチーフに作ったモデルハウスが彼女の外への憧れを象徴している。
マデリンは妄想することで閉ざされた空間で生きるしかないことから解放されたいと思っている。
それが隣に引っ越してきたオリバーとの出会いによってマックスになる。
さて、
悩ましいのはマデリンの母の人物設定
愛する夫と息子を事故で亡くし、その直後に起きた幼いマデリンの原因不明の呼吸不全
マデリンが深刻な病気だと思い込んでしまうのはわからないでもないが、思い込み続けたいとしたのは理解しがたいものがある。
彼女はマデリンを愛する。
それ故オリバーを家に入れたカーラを許せない。
でもそうさせたマデリンにはかなり寛容だ。
彼女の持った恋心に理解を示す。
しかしハワイに行ったこととそこで起きてしまった体調不良
マデリンがSCIDだということを現地の医師に言わなかった。
つまり彼女は自分がしている嘘を端然とわかっていることになる。
それが「許してほしい」という言葉になるが、18年間だ。
その裏返しが二人の事故死に対する悲しみなのだろうが、かなりサイコパスだと思ってしまう。
最後に彼女は自宅の窓を開放した。
それは非常に象徴的なシーンだったが、この物語の疑問をこのシーンだけで解決してしまった是非は残った。
そしてこのシーンが告げるタイトルの意味
また、
マデリンの妄想の中に登場する宇宙服の人物
それは彼女の遠い記憶の果てにある父なのではないだろうか?
彼はマデリンに語りかける。
「電話に出ろ」
マデリンを宇宙から見ながら応援しているのだろう。
マデリンには彼の存在は外の世界への憧れであり、未知でもある。
それはマデリンの思い出せない遠い記憶のことでもあるし、普遍的なことでもあるだろう。
閉ざされた世界との対比
すべてが逆転したこと。
「すべて」
人は皆何かを思い込んでいることがある。
誰かのことだったり、出来事の原因だったり… たくさんの思い込みを持っている。
この作品は、その事を伝えたかったのかなと思った。
オリバー
彼の父はマデリンの父とは対照的だ。
そんな父に対し何もできないオリバーの母
「気持ちの暴走」という言葉を遣って変わることを拒んでいた。
でも彼らは父の外出中に家出することを決意した。
愛想が尽きたことを実行した。
それは、マデリンのした家出に勧奨され、彼女の勇気がそうさせた。
どうしようもないとあきらめている状況からの脱出方法
少しの勇気
このほんの少しの勇気が「すべて」をひっくり返してしまう力を持っている。
この作品のこのテーマは普遍的で素晴らしい。
ただ、わかりにくい。
エンディングはいかにも西洋的だった。
悪くはないが古さを感じてしまう。
内容的にはいい作品だったが表現に古さを感じた。
マデリンの母が窓を開放した後、彼女の中にあった「何か」を描いてほしかった。