「全体的には楽しめた」ビニー 信じる男 SHさんの映画レビュー(感想・評価)
全体的には楽しめた
元になった話を知らなかった。けれど、かなり脚色している雰囲気は伝わってくる。決してそれが悪いわけではなく、事実前半はそれら演出が非常に効果的に思えたわけだが、後半になるにつれて「本当のところはどうなのよ」という欲求が芽生えてきて、真実味のない話を受け入れがたく感じてしまう。
確かに実際のニュース映像をたくさん絡めて、必死にリアリティーを作り出そうとしていたけれど、マイルズ・テラーが何となくビニーとして捉えることができず─実際のビニーを知らなかったのだけれど…─しかも、なぜかビニーの実際の映像は本編中ほとんど出てこなかったし、それがちょっとしたフラストレーションにつながった、構成が実映像と絡んでいただけに…。
後になって、マイルズはビニーに全く似ていないと分かって、実映像を絡ませることができなかったことも納得でき、この相違を埋めるための苦肉の策が古いビデオ映像の演出だったのかと勝手に判断した。似てなくてもいいけど、あまりにも違っているような気がした。ボクシングに詳しい人にとってこの作品はどう映るのだろう。まぁ面白ければいいのかもしれないが─。
話そのもは面白いし、脊椎固定器具のハローなるものの絵力が物凄くて、ハローが絡むあらゆる演出に興味をそそられた。それがあまりに強烈で、ボクシングそのものを食ってしまっていた。メインであるはずのラストの試合のシーンなどはなくても良かったのではと思ってしまうほど。血とこぶまみれのマイルズの顔があまりにはまっていたため、どうにもチャンピオンには見えなくて、最後の判定も疑惑のようにも感じてしまった。それもひっくるめてのボクシングだということだったのか─。