「マイルズ・テラーだけじゃなく、アーロンの肉体改造」ビニー 信じる男 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
マイルズ・テラーだけじゃなく、アーロンの肉体改造
「ラ・ラ・ランド」(2017)のデミアン・チャゼル監督が注目されるキッカケとなった「セッション」(2014/原題: Whiplash)で、青年ジャズドラマーを演じたマイルズ・テラーが主演。
マイルズ・テラーは、その「セッション」でもトラックにぶつかったが、またもや自動車事故で血だらけになる映画である・・・(笑)。おもわず茶化してしまったが、それは本質ではなく、実在するボクサー、"ビニ―・パジェンザ"(現在54歳)を描いた作品だ。
"ビニ―・パジェンザ"は、世界チャンピオンを獲得した直後に、自動車事故に遭う。首を骨折する瀕死の重傷を負い、選手生命の終わりを告げられたが、そこから奇跡の復活をとげ、王座奪還する。まさに"事実は小説よりも奇なり"を、驚異の精神力と努力でなしとげた偉大なボクサーの話である。
ボクシング映画の多くが、"ドラマティックな勝利や復活劇"を描くわけだが、これは実話なので、完全なリアリティ描写こそが映画の生命線となる。
ハリウッド俳優が徹底的な役づくりをするのは、もはや当然であるが(レベルが上がって俳優は大変)、マイルズ・テラーの肉体改造も相当なもの。さらに自動車事故のシーンや、その後の治療の経過とトレーニングの姿の痛々しさはすさまじい。
また、ビニーにとってはトレーナーであるケビン・ルーニーの存在も大きい。ケビンは、マイク・タイソンを世界チャンピオンに導いた人物として有名だが、本作では「ハドソン川の奇跡」で副機長役を務めたアーロン・エッカートが演じている。これが一瞬、アーロン・エッカートに見えない。なんと、酒浸りの自堕落なトレーナーである本人に近づけるために18㎏も増量しているのだ。マイルズ・テラーだけでなく、こちらも見どころ。
エンドロールで実際のパジェンザの映像が流れる。パジェンザはマイルズ・テラーとは似ても似つかない顔立ち・風貌なのだが、インタビューでのセリフや、声色(イントネーション)まで似せていたことに驚く。
リアリティ追求の感動を楽しめる作品である。
(2017/7/23 /TOHOシネマズシャンテ/シネスコ/字幕:林完治)