僕とカミンスキーの旅のレビュー・感想・評価
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この監督ならではの脅威の美術力は尚も健在
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我々は未知なる人物名に出くわすとついネット検索の小道に逃げ込むものだが、そんな人がますます頭を「???」に陥らせるのが本作だ。カミンスキーって誰?カンジンスキーじゃなくて? 兎にも角にも彼は、マティスの弟子にしてピカソの友人。60年代のポップアートの寵児でもあったとか。
名作「グッバイ、レーニン!」で驚きの虚構世界を作り上げた名匠ベッカー監督は、本作でも美術史を踏まえた世界観を巧みなセットと絵画風のビジュアルを駆使して齟齬なく織りなしてみせる。原作からここまで立ち上げるには相当な時間と力量を要したはず。序盤のドキュメンタリー的手法もお見事だし、自己中な美術評論家と伝説の盲目画家による駆け引きと、その先に心を通わせていく関係性には見応えがある。登場人物やエピソードをもう少し整理してもよかったかなと思ったが、ここらが逆に多少混乱しているところもまたリアル。この監督にしか成しえないワザと言えるのかもしれない。
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