劇場公開日 2017年3月25日

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「かの国の歴史に興味を持つきっかけに」サラエヴォの銃声 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0かの国の歴史に興味を持つきっかけに

2017年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

興奮

知的

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ。100年前に第一次世界大戦の引き金となった重大な事件が起こったことは世界史で習っていても、周辺諸国による占領・統治が繰り返され、民族的にも複雑なこの国についてよく知らないというのが私を含め大半ではないか。もちろん、歴史的民族的背景をある程度把握しておくほうがより理解できそうな台詞も多いが、知らなければ楽しめないというほどでもない。深刻なテーマを扱いながら、タノビッチ監督らしいユーモアもあり、ホテルでスリリングに進行する群像劇の面白さに引き込まれる。

監督はボスニア紛争を描いた「ノー・マンズ・ランド」をはじめ、常に社会的弱者や権力に翻弄される個人の側に立ってきた。民族対立、貧困、労働者の搾取といった問題はけっして遠い世界の話ではない。この映画を入口に、当地について調べたり、監督の過去作をさらに観賞してみるのもありだと思う。

高森 郁哉