劇場公開日 2016年12月24日

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「エメリッヒの"歴史改ざん映画"で終えるべきだろうか?」ストーンウォール 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エメリッヒの"歴史改ざん映画"で終えるべきだろうか?

2016年12月26日
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鑑賞方法:映画館

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確かに映画に対する批判は納得せざるを得ないと思う。史実無視で撮ってしまった事実は重くのしかかるし、”ホワイトウォッシング”意見自体もやはり同意するしかない。仮にも『インデペンデンス・デイ』でウィル・スミスを推した偉業を持っているエメリッヒだけに、尚更何故こんな結果を招いたのか理解に苦しむ。それでも僕がこの映画に星を4つも与えたのは、単なる粗悪で軽蔑すべき”漂白映画”に収まらない何かをこの映画の中に見つけた気がしたからです。単なる”こういう事件があった映画”で終わらない何かを…。

それはきっと”捻じ曲げた事実”の裏にあると思う。架空の白人青年を主役を据えた背景や、事実をどれほど捻じ曲げてでも映画を生み出し世に放った。それは今尚純粋LGBT映画への躊躇や敬遠、そして”妥協”した結果がいかなる批判を招くのか、をエメリッヒは自分を使って伝えたかったのではないか?勿論関係各所としてはたまったものではないだろうし、それなら事実に即した映画を作るべきだというだろう。ただそれでもこの映画を”恥ずべき歴史改ざん映画”で終わらせてしまうのは、果たして正しい事だろうか?ここから何かが生まれることも決して否定できないのでは?

まあエメリッヒ監督作はよく事実を捻じ曲げてるが、それでも無価値な映画だと決めつけるのは頂けない。実際ジェレミー・アーヴィンやレイ役のジョニー・ボーシャン、梶裕貴さん始め吹き替え版の芝居は一見の価値がある。それに映画は報われないラブストーリーとして見ても、シンパシーを抱かずにはいられない出来である(キアヌの『スウィート・ノベンバー』が地味に好きな人間なので)。

見苦しいファンの弁護と言われても否定できんが、アンジー監督『アンブロークン』と同じで無下にできない映画。自分はこの映画を観れて良かったと思ってます。だって知らないことをここで少しでも知れたんだから。

追記:舞台挨拶付の映画鑑賞でした。あんなに梶さん近くで見れるの、早々ないので貴重でした。トークパートも良かったです。アニメファンも観てほしい。

平田 一