「補いきれない穴」HiGH&LOW THE RED RAIN れーさんの映画レビュー(感想・評価)
補いきれない穴
※ネタバレはしていませんが長いので表示が小さくなるようにネタバレタグを付けます…。
予備知識ゼロで映画1作目を鑑賞後、そのハチャメチャなエネルギーにハマり、ドラマシリーズを一気見してから臨んだ2作目。期待をし過ぎたせいもあるが、あまりに残念な印象。
雨宮兄弟にフォーカスしたストーリーのためか、山王以外のS.W.O.R.D.の面々は回想でしか登場せず、そのため前作で魅力だと感じた各勢力オールスター出演というゴージャス感、個性豊かなキャラとアクション、そして桁外れの人数での乱闘から生じるお祭り感は皆無。
ではその代わりに鑑賞者が何を求めるかといえば当然、本作のキーキャラクターとなる長兄・尊龍と雨宮兄弟の絆の物語だろう。
だが、今作はそれが最大の欠点となっている。脚本と演出、つまりストーリーやテーマを語る手際が悪いにも程があるのだ。鑑賞中、あまりに陳腐な展開の連続に本気で気分が悪くなり帰りたくすらなった。首を捻りたくなるキャラの行動原理、大声で喚きながら状況を繰り返し解説してくれる演技のくどさ、混乱するだけの時系列の配置、バラードをBGMにしたスローモーションの多用、笑ってしまうほどの御都合主義、大作邦画で1億回くらい見た「いつもの」展開を想像しながら「こうなったらやだなぁ」と思っていると本当にその通りになる。感動的っぽい、シリアスっぽい、いい事言ってるっぽい、記号的な「○○っぽさ」を散りばめただけで何かを説明した気にならないで欲しい。
結局長兄は何がしたかったんだ……。
また、雨宮兄弟の用いる「ゼロレンジコンバット」という素手で拳銃を制圧するアクションはなるほどなかなか華があるが、彼ら以外の格闘シーンがないのでどうしても一本調子である。更に、明らかに人を殺害してるとしか思えない描写があるので、前作はなあなあで済ませられた暴力表現への評価がシビアになってしまう。
美点がまったくないわけではない。
海外ロケによるアジアンテイストな無国籍感(わざわざ天気予報の画面で日本全土を雲で隠してまで)、「邦画にしては」というカッコつきながら迫力のあるカーチェイスシーン、計算された構図・照明・被写界深度による視覚効果など、映画のルック自体はとてもリッチだと感じた。
ただ、それらはあくまで楽曲のPV的な美点であって、映画としての評価には星一つ加点するのみである。
1作目のストーリーテリングが巧みだったかと訊かれればお世辞にも褒められたものではないが、前作はそういった穴を補って余りある超強力な勢いがあった。今作はどうだろうか。前作の良さが半分になり、悪さが倍増した。雨宮兄弟というキャラクターは魅力的だが、それだけでは補いきれない巨大な穴が空いている。そんな印象である。
蛇足だが、あくびを噛み殺しながら鑑賞していると、隣に座っていた名も知らぬ女性はよほど感動したのか中盤からずっと嗚咽を漏らしていた。ある意味すごく貴重な映画体験を出来たように思える。ありがとうHiGH&LOW!!こんな長文でレビュー書き散らすくらいなんだかんだ好きなので次回作が出たらもちろん行きます!