「象印マホービンのデザインも手懸けてます」変態だ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
象印マホービンのデザインも手懸けてます
タモリ倶楽部好きでしかもサブカル好きだったら、最も有名な人の一人であろう安齋肇の初監督作品、しかも原作者がみうらじゅんで、いかにも仲間内だけで作った羨ましさの境地のような作品である。一応映画会社も抱き込んでいるのだから、『ゆるキャラ』ムーブメントの貯金はここでも生かされている筈。
作品の内容は荒唐無稽だし、みうらじゅん的世界観爆発なペーストである。SMあり、熟女系AV女優あり、ロック、フォーク、そして、熊・・・クマ?最後はよく分からんがw
勿論、ツッコミどころ満載であり、まぁ普通の商業ベース作品ならば絶対通らない企画なのだろうが、そこは商業としての『サブカル』を代表している二人だからこその許される内容なのだろう。
本作はとにかく秀逸なのはキャスティング、特に女優だ。月船さららと白石茉莉奈を起用したことが作品に深く影響を与えている。天使と悪魔を表現するのにこれ程絶妙なキャスティングはないだろう。良妻賢母でグラマラスな妻、そして的確に自分の性癖や性感を突いてくる女王様の愛人。主演の前野健太の演技やシルエットの貧弱さをフォローできていて、逆に味わい深いものにしている。
場面の殆どが白黒で、カラーが一カ所しかない不思議な映像だが、雪山の林のカメラワークは幻想的で、手垢がついた表現だが、『シュール』という世界観を巧く表現できている。愛人を食い散らかした熊との対峙で天命を受けたかのような空からの稲光、闘う武器はアダルトグッズ。最後は熊のケツ穴に自分も入れさせられていたピンクローターをぶち込み、とどめを刺す。まぁ企画会議を高円寺近辺の飲み屋で馬鹿話しながら作っていったんだろうなと思わせるほどの展開は、作品の行間を読むのも馬鹿馬鹿しい程の脱力系だ。
随分金の掛かった彼らの『おふざけ』を笑えることができれば、反体制側の判子を押される事請け合いである。
もう少し、主人公のマゾヒズムを感じさせる伏線を張ってくれたらもっと深みが出ると思うのだが、そう思うのもやはり自分も『変態』かw
前野健太の主題歌は切なく綺麗な楽曲なので、お薦め。