劇場公開日 2016年12月10日

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「怪物都市東京VS怪物レストランノーマ」ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

怪物都市東京VS怪物レストランノーマ

2017年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

ノーマ全メンバーによる東京出店までの挑戦と葛藤の話

北欧デンマークにある世界最高のレストラン「ノーマ」、以前ドキュメンタリ映画「ノーマ 世界を変える料理」を見ていたので興味が湧いた。
「ノーマ 世界を変える料理」は世界ベストレストランの王座を奪還するまでを描いているのに対して、本作は期間限定の東京出店の舞台裏を描いている。
どちらも、見たこともない食材や調理法などが拝めるし、オーナーシェフのレネ・レゼピとその仲間たちの料理に対する熱い姿勢が堪能できる作品だ。

冒頭はまさに開店直前のシーンから始まり、出店の経緯や食材選びなどで物語が進んでいく。
途中まではレネよりも東京先遣隊のメンバーの悪戦苦闘を主に作品を引っ張て行く。

リーダー的存在のラースが渋い髭のおっさんでめちゃくちゃかっこいい。
筋トレで鍛えた体、腕の入れ墨(文字の螺旋や風神雷神)全身から出る何とも言えない魅力が有る。

他のメンバーも個性的でそれぞれに強みや才能があり、料理への愛や探求心がにじみ出ていた。

ちょっと本題とそれるが外国のシェフは入れ墨が当たり前なのだろうか?ノーマのメンバーは結構入っている人が多かった。
「シェフ 3星フードトラック始めました」でも大抵のキッチンメンバーはタトゥーだらけだったし、意外とパンクな人が多いのだろうか。
前に何かで見て知ったのだが、江戸時代の飛脚が全身入れ墨だらけだったのは、服を着ない仕事だったから病む追えずファッションと心意気を入れ墨に託したんだそうな。
入れ墨にあまり良くないイメージを持っていたが、服の自由の無い人たちの苦肉の策、体が資本だという意思の表れだと思うとなんだか粋だしかっこいいかもと少し思った。

劇中メンバーの一人が、「キッチンはいい、次の料理の事だけを考えてればいいだけだから」と言っていた。
日常であれこれ考える時間より夢中で前の仕事に取り組むのが、無心でいられるのが好きなのだと。

以前見たヨガのドキュメンタリー映画「聖なる呼吸」で言っていた事を思い出した。
「ヨガは心の解放だ、体を隅々までコントロールするために余計なことを考える隙がなくなる、心と体が一つになり、日常で起こらない無心の状態を体験できる」

全然違う意味なのかも知れないが、ヨガもノーマの料理人も、達人の域に達すると無我の境地に至るのだなと思った。

ノーマの忙しさは無我の境地に達する環境だが、日々の作業は繰り返しになり単調になる、それは刺激の無い日々でもある。
レネはそんな日常を変える機会にと東京出店を企画した。自らの位置を常に困難な所に置く姿勢はただただ尊敬の一言だ。

日本と言えば鮮魚にかけて世界随一の技術を持っている、ノーマの料理人では到底かなわないほどの職人が至る所に居る。
そんな中でどう戦うのか、どうお客を楽しませるか、徐々に疲労し苦悩しながらも進化していくメンバーやレネの姿は凄く輝いていた。
色んな調理をしている中で、印象に残ったのは「果物を刺身のようにさばく」だ。これは東京に来てから発想した方法で、ノーマならではの発想だなと思った。

最期は東京店で提供された料理が説明されてエンドロール、美味しそうと思う以前にどんな味がするのか想像できない、しかし食べてみたくなる皿ばかりだった。

世界最高のレストランの裏側、働く人達の意見、レネの心の在り方などとても刺激的な映画体験だった。
しばらくは外食する時、自分で料理をする時など、食に触れる度にこの作品を思い出すだろう。

劇中セリフより

「レネの料理は食べた後、5分後でもインパクトが残るんだ」

食べた瞬間の感動は頻繁に体験するが、食べ終えてなお衝撃的な料理は食べたことがない。
ノーマでの食事は無理だろうが是非体験してみたい感覚だ。
今度、ちょっと高い店で食事してみようかなと思った。

フリント