劇場公開日 2017年5月5日

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「あのイヌの名前」ノー・エスケープ 自由への国境 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5あのイヌの名前

2017年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

単純

興奮

移民嫌いの白人が、メキシコから密入国しようとする不法移民を片っ端から惨殺する。こういう事件が絵空事でないことは、トランプが大統領になったことを例に挙げなくても明らかだろう。実際、アメリカとメキシコの国境近辺で武器を持って自警団する白人はドキュメンタリー『カルテル・ランド』にも登場するし、同じ白人が日本のニュース番組で取材されてもいた。

しかし、本作で一番凶悪なヒールは犬だ。ご主人様の命じるままにメキシコ人を追い回し、躊躇することなく喉笛に噛みつく殺人犬。『白い犬』を彷彿とさせる怪物である。この犬が〇〇〇を喰らう描写の衝像は、犬好きの人には申し訳ないが、本作で最もエキサイティングな瞬間だったりする。

飼い主の白人はこんな犬も心から可愛がっているが、犬の名は「トラッカー(追跡者)」。結局この男は、役割でしか愛犬の名前を付けられなかったのだ。想像力の欠如がヘイトを煽る、なんとも象徴的なネーミングだと思う。

村山章