「国ではなく未来を繋ぐ闘い」KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
国ではなく未来を繋ぐ闘い
今秋発売される大作ゲーム『FINAL FANTASY XV』に
つながる物語を描いたフル3DCG映画が登場。
何を隠そう僕もFFシリーズのファン――じゃないです。
ええと、ファンの方スイマセン、RPGニガテなんで
シリーズ1作もプレイしたことないです(15作目なのに)。
中学の頃に友達のプレイをぼんやり眺めてた程度。
なんか映像キレイだしぃアクションも派手そうだしぃ
スカッとできんじゃね的なすごーく適当なノリで鑑賞。
ま、国産3Dアニメでどこまで高クオリティな映像を
作れるか、ゲームではなく映像作品としての出来は
如何ほどか、という点が気になったのが一番のトコ。
2001年の例の作品も一応観てたので興味があったし。
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結論から書くと……ゲーム知らなくても楽しめる出来。
世界観のオリジナリティ、映像のクオリティ、
そして大スケールのアクションは見事だ。
剣と甲冑を身に纏い、炎や稲妻を手のひらから繰り出す
中世風ファンタジーと、自動車、機関銃、高層ビルなど、
現実と地続きのテクノロジーが同時に存在する独特の世界。
FFファンにとっては至極当たり前の世界観なのかもだが
実写のような映像でこれらがスクリーンで活写されると
これが下手なファンタジー映画以上に不可思議で面白い。
CGのクオリティも総じて高い。
ビルや群衆などはやや粗かったり歩行シーンなど
ではコマ落ちしているような印象を受けるものの、
主要人物たちの表情のリアルさ自然さは驚きで、
時々「ここ実写じゃないの」と思ってしまうほど。
100億以上をかけて制作しているハリウッドのCG
アニメと比較しても十分勝負が出来るだろうレベルだ
(本作の制作費は分からないが)。
アクションシーンも熱い。
冒頭の攻防戦と、後半これでもかと描かれる都市大破壊。
細かな瞬間移動を繰り返す立ち回り(『ジャンパー』ぽい)、
魔法の壁や剣を次々繰り出してのバトルはド迫力だ。
圧巻はクライマックス! 人間対人間・巨大兵器対巨大兵器
の闘いが同時に描かれるとんでもないスケール感は
スクリーンで観る価値アリアリである。
ドラマの主軸となる、ルシス王国の王レギスと、
王直属の精鋭部隊“王の剣”の凄腕ノクスの2人。
祖国を守ることにこだわり続ける“王の剣”メンバーに対し、
レギス王はもっと大きな見地で動いている。即ち、
戦火を避け、民を守る事で、未来を繋ぐこと。
ノクスはその“若き王”の覚悟に共感し、戦いへと臨む。
かたや蔑まれ続けた過去にこだわり続け、祖国のみの為に戦う者たち。
かたや祖国のみならず全ての人々の未来を守る為に戦う者たち。
大スケールのアクションも相俟って、両者の
最後の激突には胸を熱くさせるものがあった。
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ここから不満点。
一番の不満は、主人公たちの背景や行動動機が分かりづらい点。
最初の10分間で聞いたことのない国の闘争の歴史と
覚えづらい人物名と複雑な人間関係とがズドドドと
説明されるので「ああわあわわわわ……」となる。
魔力で防衛された王国 vs 科学力で侵略を謀る帝国
という構図は分かる。だが、“王の剣”の立ち位置が
フクザツ過ぎて自分の脳ミソではすぐに理解が追っつかず。
彼らのこだわる祖国がどんな場所か、どれだけ大事な場所か。
それらがまず伝わりづらいから、意見の相違で
分裂していく“王の剣”の葛藤が理解しづらかった。
(そもそも王国への忠誠心の薄い兵達に戦力を与え
“王の剣”などと名前を付けたのも釈然としない。)
また、北欧神話のクラーケンのような化け物や
様々なモンスターも登場するのだが、これらが
魔法主体の王国ではなく科学主体の帝国側が
使役しているのでちょっと混乱。ふつう逆な気が……。
あの脆い船の中にどうやってあんなデカイのを
飼ってたんだとか色々なツッコミも浮かんだ。
もうひとつ、ヒロインに当たるルナフレーナ姫の吹替。
忽那汐里は良い女優さんだと思うが、この吹替(特に
発音の明瞭さ)に関しては、世辞にも上手いとは言えない。
逆に何で綾野剛(ノクス役)はあんなに上手いのか謎……。
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作り込まれた世界観に置いてきぼりを食らう感じを受け、
フィーリングでの鑑賞に終始した感はあるのだが、
それでも美麗な映像と熱いアクション・ドラマを
楽しむことができました。続きが気になるね。
観て損ナシの3.5判定で。
あ、けどこれ、続きを知るにはゲーム本編をプレイ
せんといかんのよねえ。RPGニガテだし参ったね。
<2016.07.23鑑賞>