「少し大人になる夜」14の夜 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
少し大人になる夜
田舎の中学生が握手会に行く道中の話
期待以上の青春そして性春の物語だった。
中学生の頃、当時の不満や不安が呼び起される。家族に不満、仲間に不満、そして自分自身に不満だったあの頃、見ていてむず痒くなった。
1987年の夏、居ても立っても居られなくなって飛び出した夜の先にあるもの、そして朝が来たとき主人公は・・・
一夜の逃避は期せずして大人への一歩だったのかも知れない。
物語の期間は一日だし、近所を回るだけなのに物凄い冒険譚のようであった。中学生の夜はそれほどまでに非日常なのだ。
主人公と仲間たちが良かった、口だけの奴、クールぶってる奴、パシリ。不良にもオタクにもなれず、ただ見下して陰口を叩く。
自分にも心当たりがある、どの世代にもいるであろう中途半端野郎ども、本当に共感するところが多かった。
不自由ではないが不満ばかりの毎日、主人公の苛立ちと焦りが作品からにじみ出てくるようであった。
女子にはわからない男子の悩み、バカだなと彼らを笑えるのは、それを経験しているからではないだろうか。
全ての男子を経験した男性に見てもらいたい、笑いと感動の作品だ。
主人公たちの演技もなかなかだが、やはり脇を固める大人の俳優陣が出しゃばりすぎずにいい存在感をだしている点もよかった。
光石研の情けない演技は必見だし、理想のなりたくない大人代表をみごとに演じていた。
ビデオ屋も凄くよかった、チェーン店っだはない個人の店、ちょっと大人な雰囲気がなんとも懐かしい。あの独特の空間、居るだけで何だか少し大人になった気分のする空間の表現も素晴らしい。
個人的に主人公のかっこいい一面が知れるエピソードは正直グッと来た。ヒロインの不満もすごくわかる。青春だなぁとつくづく思わされた。
「私たちのハァハァ」と双璧をなす近年の青春ロードムービー、時代は変われど変わらないもの、今の子たちもこんな事で悩んでるだろうし、大人だって悩んでただろうと思うと少しほっこりする。
劇中セリフより
「お前がカッコ悪いのは、父さんのせいじゃないぞ」
周りを嘆いてばかりいると、いつの間にか自分も同類になってしまう
人の振り見て我が振り直せとはよく言ったもの、まずは自分を変える事からはじめればいい、踏み出す勇気が欲しいです。