キオリのレビュー・感想・評価
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『か』の次は『き』
ネットでググってみたら漫画が原作のようだ。原作が多分しっかりしているのだろう、ストーリーとしてとても上手に組み立てられているように感じた。確かに低予算なのだろうから、寂しい部分、特に脳の培養のセットを含む研究室がまるで学校の理科室みたいなイメージなのは仕方がない。ただ、一応SFなのだからもう一寸作り込んで欲しかったのは贅沢か・・・
物語は“脳”だけとなった元風俗嬢と、世話をすることになった研究員との心の通じ合いを軸に進んでいく。女の生い立ち、心の機微、そこに自分を重ね合わせる研究員。話が進むにつれ、脳が萎縮していき、別れが近づいて来る頃、研究員にも抱えていた、引きこもりの兄との関係にも変化が出てくる。幼い頃から約束が果たされた事がない女は、周りとの関係を上手く築けずに過ごし、特に母親との関係は最悪な状態。自殺ではなく、単に花火が綺麗で、それに触れたいというだけでビルの屋上から落ちてしまった事故。海が観たかったという女の願いを叶えるべく、萎縮して文字通り脳死となったモノを持って、海に連れて行く研究員。
哀しく、不条理な世界の中で、それぞれが抱える闇を背負い、生きていく過程の中、いっそのこと身体を無くしてしまい、脳だけになりたいと厭世観に捉われる気持ちは誰にでもあり、共感を呼べる作品だと思う。
音楽がとても雰囲気とマッチしてて、巧い演出感を醸し出している作品だ。一寸だけ残念だったのは、少々冗長感というか、もたつきがあったこと。意味はあるのだろうが、もう少し切ってもいいのではないかと思ってしまった。
最後までなじめなかった母親が、娘の死に対して、他人のように拒み、でも、少しだけ悔恨の情を表現するシーンは救われた気がする。
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