「様々な困難に見舞われたけど、もうちょっと評価されてしかるべき一作」ザ・フラッシュ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
様々な困難に見舞われたけど、もうちょっと評価されてしかるべき一作
「ヒーロー映画最高傑作」と前評判の高かった本作。主演のエズラ・ミラーが過去の言動により本作のプロモーションに参加できなくなるなどの問題が影響したのか、膨大な制作費と比較して現時点で順調とは言えない興行成績にとどまっています。日本ではほぼ同時期公開で、同じヒーローを扱った作品である、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が、半ば伝説となった前作、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)を超える評判と興行成績を残していることが、本作の失速をさらに印象付けることになってしまいました。一部の映画ファンからは、前述の前評判に対して「誇大広告ではないか」という批判が起きたほどです。
では本作がヒーロー映画として期待はずれなのかというと、決してそのようなことはなく、既存のDCコミックから派生したヒーロー映画が、時に重厚さ、暗さを強調しがちであることとは対照的に、本作の演出、そしてエズラ・ミラーの演技は全般的に軽やかです。日本では時に滑りがちな英語圏のジョーク的要素も、きっちり笑わせてくれ、かつ物語の内容とも噛み合っていて、その手際に非常に感心させられます。
スピードを重視した演出も、「えっ、単にすごいスピードで走るだけじゃん」という予断と偏見を軽々と超える面白さです。マイケル・キートンのバットマンなど、DCコミック原作映画のファンであれば嬉しい仕掛けも盛りだくさんです。
やや結末の展開、そしてサッシャ・カジェ演じるスーパーガールの扱いにちょっと引っかかるものを感じなくもないけど、やはりこの迫力は劇場で観てこそ。そのため、ヒーロー映画は好きだけど厳しい評価に二の足を踏んでいる、という人には、是非とも上映期間中の鑑賞をお勧めします。