「タイムリープとマルチバースとトマト缶」ザ・フラッシュ Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
タイムリープとマルチバースとトマト缶
◉マルチバースのスリル
母親の命を救い父親の冤罪を晴らすために、トマト缶にこだわった青年フラッシュの、光速の一人旅。だがその結果、ゾッド将軍が地球を襲撃することになる。
もちろん、どちらが重たいかではない。そうではなく、私たちがこれから遭遇するマルチバースは、既にたくさん連なって存在すると言うより、寄木細工のピースであるトマト缶を一つ動かすと色や形が変わって、新しい世界が現れるような仕組みに思えてきた。そう考えると、毎日がスリルに溢れてしまう。何がピースになるか分からないし、ピースを動かす前の自分と動かした後の自分が、それぞれ別の人生を終える。
頻出するマルチバース物語のお陰で、何か人生観や死生観まで変わりつつあるように感じました。まぁ、規模の大小やリアル・ファンタジーを混ぜて想定しておくことは悪くはない。取り込まれるか? 壁を打ち破れないままか?
◉暗い星の戦い
しかし、物語のクライマックスである、ゾッド将軍対フラッシュチームの決戦が、勇壮ではなくて、暗いオレンジ色の空と大地そのままに、ただ悲壮なものになってしまったのは残念です。フラッシュが孤独な旅の中で、せっかく得た理解者(バットマン)や同胞(スーパーガールや別の自分たち)が失われていく。何のためにフラッシュは哀愁の行旅人になったと言うのか。ヒーローストーリーの観賞者としては、やはり炎を消されました。
母親の命を救ったことの結果が、こうした形でフラッシュたちを潰したのですが、せっかく時間を巻き戻したのに、やれやれ悲しいだけだぜと言う思い。理解者や同胞が別のバースできっと生きていることを信じて、そして瞼に母の笑顔を焼き付けて、未来に進むしかない。やるせ無さも湛えた終焉。
ところで、バットマンが名乗る時の、あの苦く渋い口の歪み。好んで戦いになど赴きたくない。しかしこれだけ悪き魂が溢れ出したら、戦わない訳にいかないだろう。ヒーローの苦渋の顔は、本当に素敵です。
コメントありがとうございます。
お母さんがお父さんにトマト缶の買い物を頼みさえしなかったら?
私たちはそう言う後悔を引きずって生きていますね。
でもバリーは過去のお母さんに何度も何度も会えてハグして、心のつかえがおりたかも・・・と思いたいですね。
マイケル・キートンのことですよね。
バットマンと言えば私の世代はマイケルですよ。
口が歪んでるところがなんとも渋いんですね。
でもロバート・パティンソンのバットマンも、凄く心掴まれました。
Uさんのレビューは純文学ですね。
私には絶対に真似出来ない、
言葉の組み合わせと語彙を凄く楽しみに読ませて頂いてます。
そうなんですね〜見逃しているんです、ドクターストレンジ。興味と時間と体力!が追いついていない…たくさん観たいものがあふれ出している映画界😅 本作見逃さずよかったです^^
コメントご賛同ありがとうございました😭恐縮至極でございます🙇 個人的にはマルチバースにアクセスできるのなら救われるのですが、現実はそうもいかないので・・・できることなら幽霊でもマルチバースでも何でもイイのでおふくろ母に会いたいですね。
しっかし マルチバース 万能で便利ですね。極めて共感でございます😊。
コメントありがとうございました。
寄木細工のピース!! うま〜いですね👍さすがの表現。
生きていれば理不尽な哀しみも辛い別れもいろいろあるけど、
生きているんだから前を見て歩いていこうよ😌
そんなふうにがしっと肩を抱かれた気分の作品でした。