ポケモン・ザ・ムービーXY&Z 「ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ」 : インタビュー

2016年7月15日更新
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松岡茉優が明かす、大切な夢が叶った瞬間

数年前、演じる役はオーディションで勝ち取ったものが全てだったが、現在ではバラエティに富んだ仕事に恵まれるようになった。この状況を、松岡茉優は「いまの方が恐いです。『期待に応えられなかったら』って思うと……(苦笑)」と胸中を吐露する。それでも、劇場版「ポケモン」の声優オファーが届いた際は「声を上げてガッツポーズした」というほど、ただ純粋に嬉しかった。それは、松岡だけの大切な夢が叶った瞬間だった。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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シリーズ19作目となる「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z 『ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』」へのゲスト声優としての出演。アニメーション作品での声優は初挑戦となったが、松岡にとって2つの点で特別な意味を持つ仕事だった。ひとつは、幼少の頃からアニメで親しみ、ゲームに興じ、何度も劇場に足を運んだ「ポケモン」に携われるということだ。

「声優のお仕事は、私の中では『絶対に叶える!』と決めている“夢リスト”にもあった項目。いずれやるんだ! と心に誓っていましたが、こんなに早くいただけるとは思っていなかったです。子どもの頃からずっと見てきて、ゲームはいまでもやっています。初めてのアニメ声優のお仕事として『ポケモン』に携われたというのは、私の中で大きな1ページになりました」。

松岡のみならず多くの俳優が、ゲスト声優で「ポケモン」に携わることを特別なこととして受け止める。共演した中川翔子は「『ポケモン』は世界遺産!」と語り、同作を見て涙する“ポケ泣き”を提唱しているが「ポケモン」の何がそこまで心を動かすのか。松岡は、「あまりに多くのことを『ポケモン』から教えてもらいすぎていて、どう言っていいのか…」と思案しながら、子どもの頃のエピソードを明かしてくれた。

「『ポケモン』映画を母と一緒に見に行って、私は普通に面白いなあと楽しんでいたんですけれど、ふと隣を見たら母がすすり泣いていたんですよ。当時は『何でこのシーンで泣いているの?』と思ったのですが、今回の映画を見て何度も泣いたし、あの時の母の気持ちがわかりました。子どもの頃に見た映画を振り返ると『あのシーンも、このシーンも泣けちゃう!』というシーンの連続だったんだなあって感じます」。

インタビュー当日に行われた舞台挨拶には松岡の母親が足を運んでおり、客席に向かって感謝を口にしたが、同時に子どもたちに向け「普段は言えないかもしれないけれど、映画を見終わったら、お父さんやお母さんに『今日、連れてきてくれてありがとう』と伝えてくださいね」と呼びかけた。ただ「子どもの頃から見ていた」「大人が見ても泣ける」というだけでなく、親と子の世代をつなげてくれる存在として「ポケモン」を捉えていることがよくわかる。

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そしてもう1点、今回の仕事が松岡にとって何よりも特別だった理由、それは山寺宏一の存在だ。キッズバラエティ番組「おはスタ」(テレビ東京)で、“おはガール”を務めたのが2008~10年の約2年間。そこでメインの司会を務めていたのが、山寺だった。「おはスタ」卒業後、本格的に女優を志して歩み始めた松岡だったが、その間、ずっと持ち続けていた「いつか山ちゃんと再共演したい!」という夢がついに叶った。「私の“歯車”を動かしてくれるひと」――そんな言葉で山寺の存在の大きさを表現する。

「子役をしてきて『ここからどうしよう?』という時期にいただいた、初めてのレギュラーのお仕事が『おはスタ』だったんです。それまでは“○○の幼少期”とか“クラスメイト1”といった役を演じることが多かったんですが、初めて自分が自分として認められる仕事でもあり、『どうしよう!?』って思いながら、手探りでやっていました」。

女優としての実力はもちろん、バラエティ番組などで見せる瞬発力やコメントの質の高さなど、マルチな才能を発揮する松岡だが、2年にわたる同番組での経験が大きいことは言うまでもないだろう。加えて同番組卒業後、女優を“本業”と見定め、強い決意で臨むようになるが、その決断にも山寺という一流の才能と接した経験が大きく影響している。

「“山寺宏一”って検索すると声優、俳優、タレント、司会者、DJ……ってダーッと出てくるんですよ。その全ての第一線で活躍されていて、そんな人を近くで見ていると、10代の子どもなんてすぐおかしくなっちゃうんです(笑)。女優を目指していたはずなのに、『あれもやりたい、これもやりたい』って。そこで自分は何がやりたいのか? 一番好きなことは何だろう? って立ち止まってじっくり考えて『お芝居なんだ』と思えたのが15歳のとき。今回、こうやって山ちゃんに声優の楽しさを教えてもらっちゃって(笑)、また私の歯車をカチカチと回してもらいました!」

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再共演の夢は叶ったが、声優は山寺の専門のフィールドであり「私は『同じ土俵に立った』なんて言える存在じゃない。あくまで若手女優としてゲスト声優で呼ばれただけ。その意味と意義を考えて臨みました」と謙虚に語るが、そんな松岡のために、山寺は自身の収録がないのにもかかわらず、アフレコスタジオに足を運んだ。

「スタッフの方がお呼びしたわけではなく、本当にサプライズでドアを開けたら山ちゃんがいらした。私のためにわざわざ来てくれたんだってすぐにわかったので、嬉しくて飛びつきました!」

「ポケモン」映画へのゲスト出演。それ自体、いかに松岡茉優が求められているかを証明していると言える。ドラマ「水族館ガール」主演、大河ドラマ「真田丸」の主人公・信繁(堺雅人)の“正室”役など話題作への出演が続く。

個性的で演技力の高い女優が同世代にひしめくが、「ライバル意識はない」という。見つめるべきは周囲ではなく、自分自身と自覚している。最初に“叶えると決めている夢リスト”の話が出たが、現時点でのリストの消化具合を尋ねると「俳優のお仕事に関してはリストにはないですよ」と話す。なぜなら、俳優は「私にとっては本当に大事なものだし、何かを望んで、叶わなかったら立ち直れないから」。では、俳優の仕事を除外してリストの最上位にあるのは?

「『オールスター感謝祭』のアシスタントですかね(笑)。子どもの頃からの憧れなんです!」。

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