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映画レビュー
史実性・娯楽性ともに高い日本人必見の歴史映画
映画.comさん、リクエストに応えて作品登録をしていただき、ありがとうございます。
日本では劇場公開はおろかDVD化もされず配信のみとなった映画。理由はもちろん南京事件(南京大虐殺)を題材とした映画だから。僕は配信サイトでの配信以前にYouTubeで無料公開(日本語&英語字幕付き)されていたものを観た。
いや、驚いた。さすがにここまで質の高い映画だとは思っていなかった。史実考証もおおむね正確で、日本で「史実派」と呼ばれる南京事件の良心的研究者の著作に出てくるような事実が丁寧に描かれ、かつ非常に上手く物語に取り込まれている。もちろん劇映画なのでフィクション描写は挿入されているが(冒頭のリウ・イエの戦闘シーンなんかはちょっとかっこよすぎる)、それを言い出したら劇映画系の歴史映画は全滅である。
また、この手の社会派映画は広い意味での娯楽性に欠けることがたまにあるが、そういう娯楽性(=面白さ)も一級品だった。登場する実在人物はジョン・ラーベやミニー・ヴォートリンなど南京安全区国際委員会の面々に限られ、彼らと架空の人物が自然に交わっていて不自然に感じさせないのもすごい。映画全体として史実とドラマの融合が非常に高いレベルで成功している。陸川(ルー・チュアン)監督の力量は相当なものだ。
出演者ではトップクレジットはリウ・イエ(劉燁)だが、彼の登場シーンは前半だけで実質的には主役ではない。実質的主人公はファン・ウェイ(范偉)、カオ・ユエンユエン(高圓圓)、中泉英雄といったあたりだろう。中泉は良心的日本兵を演じているが、その「良心的日本兵の限界」が描かれているのも非常に感心した。それとは対象的な木幡竜の演じる暴力的(というより一般的)日本兵も、日本兵同士の関係では心優しい上司であったり、また自らの罪の意識をわずかに垣間見せる瞬間があるなど一面的ではない深みのあるキャラクターとして描かれているのも印象的。他の日本兵たちも普段の日本兵同士ではごく普通の一般的な人たちが、中国人に対するときは暴虐的になるという歴史研究で指摘されているとおりの描写がなされていることも驚きである。日本人慰安婦役の宮本裕子、新聞記者役の梶尾潤一なども国際的に活躍している俳優とのことで好演でした。主要キャスト7、8名の他に、エキストラを入れると50人近い日本人が参加しているとのことで、助監督にも北京電影学院を卒業した日本人が参加しているそうだ。
ともかく日本人必見の映画になっていると言って良い。ここまで史実性・娯楽性がともに高く、それが絶妙なバランスで融合されている歴史映画はそう多くはない。