「.」アンフレンデッド 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。ほぼ全篇、Macのデスクトップ上で展開されるPOV。映像及び音声の乱れは演出上の意図との断り書きが冒頭にあり、早速オープニングのロゴコールからこの演出が施されている。徐々に各々の秘密が明かされ、人間関係が崩壊して行く様は登場人物達の人間性故、恐怖よりも小気味良さが残った。YouTubeにSkype、Photox、Facebook、Google等が実名で登場するが、楽しむには或る程度、これらメディアの知識が問われる事となり、その意味で観客が自然に篩に掛けられてしまう可能性がある。70/100点。
・ありふれた超常的な復讐譚であり乍ら、ネットサーフィン経験者やSNSを齧った事がある者(もっとも本作に興味を示すのは何等かの形でWebに触れた事がある方が大多数ではとは思われるが)には多少でも身につまされる想いがありそうで、80数分と短目の尺ではあるものの不気味な既視感に満ち溢れた一作と云えよう。
・自殺に追い込まれた報復が物語の縦糸とするならば、誰をどの様に恨んでいるかが横糸となるのではないか。亦、ほぼ静止画と云えそうな程の短いショットではあるものの、登場人物達の最期を捉える映像等で複数回に亘り、ショッキングなゴア描写が垣間見られるので、そのテの免疫が無い方の鑑賞は要注意である。
・H.ソッサマン演じる“ローラ・バーンズ”は、'96年1月20日に生まれ、'13年4月12日に自殺したとされ、物語は彼女の一周忌に当たる命日から始まる。カナダでいじめを受けた告発動画を投稿し続けたアマンダ・トッドさん、シリコンバレーでフットボール部員三人に強かんされたオードリー・ポットさんと、実在の自殺に発展した二件の事件に触発され、製作に至ったらしい。
・公開当時、本篇に登場するSkypeやFacebook等のアカウントは実在していたが、その内幾つかは'18年1月現在、現存している。更に大きなネタバレを書くと、“Billie227”と云うSkypeの謎のアカウントは、作中でも触れられている通り、そもそもS.ヘニッヒ演じる“ブレア・リリー”のサブアカウントであった。
・オープニングにタイトル表記は無い。本作と似た設定で『デス・チャット('13)』、『サイバー・ストーカー('15)』等を想起したが、実名サイトが登場するのは本作が初であると思われ、ほぼ全篇をPC画面に徹底した本作の方が出来栄えも数段上である。
・“ケン・スミス”役のJ.ワイソッキーを除き、画面内で遣り取りする五名は同じ家屋内を仕切り、各部屋に見立てた状況で撮影が行われた。リアルなリアクションを撮る為、常に脚本は現場で書き直され、アドリブや10分間にも及ぶ長回し等を繰り返し、スタッフはタイムラグを防ぐ為、イントラで繋いだ模擬チャットシステムを作成し、撮影に臨んだと云う。
・製作開始から、"Offline"の仮題で進められたが、カナダのファンタジア国際映画祭出品時に"Cybernatural"と改題され、更に一般公開時に現在の"Unfriended"へと改められた。
・鑑賞日:2018年1月3日(水)