アニキ・ボボのレビュー・感想・評価
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午前3時に頑張ってもロクなことにならないよ
ポルトガルの巨匠オリヴェイラ監督のデビュー作。一見教育映画的だか、子供たちの世界に潜む単純さと残酷さを隠し味風に織り交ぜている。
ドウロ河沿いの石畳、階段、鉄道、猫など牧歌的な情景が本当に素晴らしい。
女の子がマドンナ一人しかいないんだったら、そら取り合いになるだろうなあ。でもあんなチヤホヤされたら、将来性格悪くなりそう。
命がけで盗んだ人形があんまり可愛くなかったのもリアル。
少年が犯した罪とその罰?と優しさ
少年時代の自由と孤独。川、影、汽車
1942年。マノエル・ド・オリベイラ監督。内省的な少年は小学生グループのなかでも浮きがち。グループリーダーの少年と仲の良い少女を気にし始めると、なにかとリーダーから嫌がらせを受けるようになる。少女がほしがっている人形を手に入れて一気に仲良くなろうとする少年だったが、、、という話。
少年少女を描きながら、「自由と孤独」のテーマを丁寧に描く手法がすばらしい。わらわらと走る少年たちの姿だけで気分が晴れてくる。少女をめぐる淡い思い、リーダーとのいさかいや盗んだ人形をめぐる正義と反省、商店主や警察官や教師といった大人をめぐるやりとり。それぞれが微妙に絡み合って、カバン、人形、帽子、といった小物が上手に配置され移動していく。なんと自由な映画か。
子どもたちの社会にも支配秩序があり、そこから自由になることは孤独になることでもある。孤独を引き受けてあまりある思い(恋)があれば問題はないが、そのために、子どもたちはどこまで「正義」を忘れることができるのか。どこまで「誠実」を考えずにいられるのか。そして、恋も自由も友だちも手に入れる手段はないのか。映画はその答えを描いているように見える。
子どもたちの背景には、悠々と川がながれ、どきりとする自分自身の影が揺れ、すべてを吹き飛ばす力として汽車が走る。大いなるものとの関係で自身を定義していく、だれもが通過した少年時代を描いた映画。すばらしい。
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