「マザー・ソルジャー」アイアン・ソルジャー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
マザー・ソルジャー
このピント外れの邦題で軍事アクションと勘違いさせてしまうが、これは秀作でしょう!
15ヶ月の任期を終え、戦地から帰還した女性衛生兵マギー。
待ちわびた息子と再会するが、幼い息子ポールは懐かず…。
軍人が家族の元に帰って、大喜びで迎えられハグ…。
何の違和感も無い光景だが、それは単なる理想でもあると思わされた。
殊に、物心付き始める時期。
その時期に無い、母の温もり。
空白の期間は大きかった。
さらにマギーにとってショックなのは、ポールが元夫の現恋人に懐いている事。
この恋人が嫌味な女じゃなく、ポールに実の母のように愛情を注いでいる。
半ば強引に息子を引き取る。
駄々をこねる息子。
懐かれない苛々が募り、遂には大声を上げてしまう。
息子の事を誰より愛しているのに、端から見れば虐待する母。
そう見えてしまう光景が痛々しかった。
こういう作品の場合、その後の展開は二つに分かれる。
一つは、2時間じっくりかけて母子の関係修復を描くパターン。
本作は、もう一つのパターンだった。
子供の順応は早いもの。
次第に母子関係は修復されていく。
そして息子の口から“ママ”の言葉。
マギーにも新しい出会いが。
母として一人の女性として生活を取り戻した時、無情であまりにも早過ぎる再出兵の命令が…。
蔓延る男尊女卑を表した劇中の印象的な台詞(ちょっとうろ覚えだが)、「男なら称賛されるのに、女なら悪い母親と責められる」。
「子供より国を選ぶのか」と元夫。
親権すら奪われ、マギーには非常手段がただ一つ。
が、それは上官を落胆させ、チームを裏切るもの。
子供か、任務か。
どちらもマギーにとっては大事なもの。
しかし、どちらかしか選べない。
マギーが下した決断は…!?
ミシェル・モナハンが熱演。
知名度も無く地味な作品故キャリアから忘れ去られるだろうが、間違いなく彼女にとって大きな役。
なかなか濃厚なラブシーンもあり。
言うまでもなく、ポール役の子役は愛らしく。
最後は勿論言えないけど、絶妙な切なさと感動。
いやはや、いい映画だった!
これが未公開だなんて…。