「本当のドキュメンタリーは地味です」ナオトひとりっきり Alone in Fukushima odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
本当のドキュメンタリーは地味です
福島の双葉郡富岡町、ちょうど第一原発と第二に挟まれた汚染地域だ、風上だったこともあり制限はあるものの主人公・松村直登さんは富岡町に一人残り、遺棄された動物や牧場主から頼まれて牛の世話を行っている奇特な人だ。海外のメディアにも注目され、フランスにも招かれたそうだ、本作の監督・撮影・編集と一人で作り上げた中村真夕さんも報道に関心を持ち長期取材を申し込んだそうだ。震災後の2013年から15年の2年間の記録である。
驚くのは松村さんは畜産家でも動物愛護家でもない普通のおじさん、以前は建設関係の小さな会社を経営していたそうだ、賞賛も多い中、「被爆した動物は引き取り手も無く殺処分される、見殺しにはできない、これは運命だと思ってやっている」と言う。
助けてくれる獣医さんはいるものの組織ではなくほぼ一人で世話をしている、だから動物の数も限られる、動物たちには救世主だろうが見方を変えれば動物たちの世話をすることで逆に活きる力を与えてもらったようにも見えるのです。
未曽有の大災害ともなればドキュメンタリーも多いのですが中には脚色、偽善的な作品もあり鵜呑みに出来ない面もあります、中村監督は自身の目で確かめるべく密着取材を行ったそうです。
当然、メッセージ性はありますが誇張はありません、淡々と松村さんと動物たちとの日常が描かれるだけです、動物たちの表情も自然ですので良くある癒しの動物ものとも違いますがそこが本作の魅力なのでしょう。
映画は5年前まででしたのでその後が気になりググってみたら松村さんのシンパの方でしょうか「ときぶーの時間」というブログに松村さんの近況が載っていました、今もご健在で世話を続けられておられるようです。安心して暮らせる日常が一日も早く取り戻せますように祈っております。