トレヴィの泉で二度目の恋をのレビュー・感想・評価
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トレヴィの泉で幾つになっても恋を
シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマー。
共に半世紀以上のキャリアを誇る二人が魅せる老いらくの恋。
この二人だからこその軽妙なやり取り、ユーモア、愛らしさ、ハートフル、そしてしみじみとした味わいと切なさ…。
役柄も二人にぴったり。
妻を亡くし、アパートに引っ越した頑固なフレッド。
隣室の自由奔放なエルサにしつこく迫られ…。
当初はうんざりのフレッド。
やたらとお喋りで、若い頃ピカソに画を描いて貰ったなどの虚言癖。
が、次第にエルサの明るさがフレッドのお堅い心を解していく。
高級レストランで無銭飲食などいい歳してオイオイ!…と思いつつ、一緒に居てハラハラゲラゲラ飽きさせない。
仏頂面だったフレッドに笑顔が戻る。
そんな明るさとは裏腹に、エルサは実は…。
そして、ある嘘も…。
が、二人の恋は本物だった。
エルサにはある夢と憧れがあった。フェリーニの『甘い生活』の大ファンで、ローマに行き、映画のようにトレヴィの泉に入りたい。
その夢を叶うべく、二人でローマへ。
人生最高の瞬間かもしれない。
長年の夢が叶ったローマ旅行。
お洒落して、ダンス。
しっとりした大人のロマンス。
人生を楽しむのも恋も、歳なんて関係ない。
ラストはあまりにも唐突に。
が、フレッドの元に届いたあるプレゼントに、切なくも心温かく。
原題は『エルサ&フレッド』だが、邦題の方がお洒落。
人生の終わりにあんな恋が待っているなら、老いるのも悪くない。
本作に出て来た言葉ではありませんが、
私は今まで「嘘も方便」の本当の意味を知りませんでした。
方便とは仏教の言葉で「悟りに近付く方法」という意味なんですね。
二人のウイットに富んだ会話には思わず微笑んでしまうのですが、そこは若い人とは違う人生の重さが滲みます。
お互いの子供達のことや、年齢に応じた身体の変化も。そういう部分も、一歩、一歩、二人が近付くごとに分かっていきます。
だからこそエルサは残り少ない人生を、その想像力でつらいことも楽しく、面白くしているだけだと思いました。
それを嘘だ!なんていうのは、無粋というものです。いや、残酷というものです。
それにエルサの「嘘」がフレッドを変えていくんですから、それこそ「方便」なんですよね。
実はエルサには、夢があります。
映画「甘い生活」のアニタ・エクバーグのように、トレヴィの泉のシーンを再現すること。
いい歳して何言ってるの?とか、嘘ばっかつくな!とか、フレッドは言いません。
もしその話の中に、真実が三分の一しかなくても構わない。エルサの奇妙な夢も含めて、なんて可愛い人だと、愛おしそうに抱きしめるフレッドは、いつしかしょぼくれた爺さんから、ダンディな紳士に変わっていました。
あ、男性は何歳になっても、女性を抱きしめているといい男になるんですね!
そして私もエルサみたいな、可愛いおばあちゃんになりたい。
愛する人を、笑わせるおばあちゃんでいたい。そう素直に思いました。
本作は2005年のスペイン・アルゼンチン映画『Elsa y Fred』のリメイクのようですが、オリジナルは未見です。
原題は「Elsa & Fred 」
小粋な本作には似合わない無骨な邦題が、ちょっと残念ですね(二度目って何でしょう?)。
でも構うもんか!
シャーリー・マクレーン、映画デビュー60周年記念作品です。
幾つになっても最高のコメディエンヌであるシャーリー・マクレーンと、年齢を重ねるごとに個性が際立つクリストファー・プラマーの共演は必見!
人生の終わりにあんな恋が待っているなら、老いるのも悪くない。
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