「引き寄せあう孤独な魂」共犯 ごいんきょさんの映画レビュー(感想・評価)
引き寄せあう孤独な魂
まるで谷川俊太郎の詩のように、孤独な魂はたがいに引き寄せあうのだろうか。
登校途中にいじめにあっていた黃立淮(巫建和)は転落死したばかりの少女を発見する。そして、偶然現場を通りかかった葉一凱(鄭開元)と林永群(鄧育凱)のふたりとともにそれを警察に通報することになる。死んだ少女を含め4人は偶然にも同じ学校に通う生徒だったが、それまで互いに面識はなかった。やがて、この3人の少年たちは事件の真相を探る過程を通じて奇妙な友情を育んでいく。
3人はそれぞれ全く違うタイプで接点はない。黃立淮は友だちのいないいじめられっ子。林永群は級友たちに頼りにされる優等生。葉一凱は一匹狼の不良少年だ。
死んだ少女、夏薇喬(姚愛寗)もまた孤独な少女であった。お金持ちだが母子家庭で、母親は仕事で飛び回っており留守がちだ。家庭でも学校でも全く孤独なわがまま娘だった。
少女の死後、3人の少年たちはその原因を探るべく一緒に行動する。全く接点のなかった、普通なら話をする機会さえありそうもないタイプの異なる3人が、妙に楽しそうにつきあい始めるのだ。黃立淮はもともと友だちのいないいじめられっ子。不良の葉一凱にも友だちはいない。唯一林永群だけがいつも級友たちに囲まれているが、心の中ではそのつきあいを本当の友情とは感じていなかった。彼もまた孤独だったのだ。
まるで死んだ少女の孤独な魂が、3人の孤独な魂と呼応しあったかのように孤独な魂たちを呼び寄せたのだ。しかし、やがてそこにもう一つの悲劇が起こり、それぞれの魂はより深い孤独の中に沈んでいくのだった。
いじめられっ子の少年の変身ぶりが少し不自然だが、少年少女のみずみずしい演技が光る傑作である。