「苦しみと癒しに満ちた美しき世界観」ヴェラの祈り masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
苦しみと癒しに満ちた美しき世界観
監督の名も、作品名も初めてなのだが、DVDのジャケット裏面の田舎家があまりに美しくどこか孤独な佇まいであったことが決定打となり、衝動的に借りた。結果、観て正解だったと思う。
冒頭の長回しもだが、各カットのファーストショットが絵画から切り取られたような美しさ。ただ美しいだけではない。どこか孤独で人心の光と影を映し出している。
また最後のワンカットは冒頭と構図的に対になっていて、哀しみの中にも小さな希望を感じさせる。二人の子ども、特に兄の方は、突然の哀しい出来事を初めはきっと受け止めきれないだろう。しかし、父から聞いた祖父にまつわる人生観が、いずれは彼の哀しみを癒すのではないかという予感を抱かせてくれる。そこを直接描かず、言葉を失う美しき田舎の風景と、時間よりも意識の流れを軸にした構成によって物語る。
2014年に公開されたもう一作「エレナの惑い」と2015年公開の「裁かれるは善人のみ」も観てみたい。
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