「人間はいかにして怪物となってしまうのか」人生スイッチ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
人間はいかにして怪物となってしまうのか
短編から中編へ、6本の話が語られて行く。
1話目は漫才で言えば掴みの部分。なかなか面白く観客の心を掴むのに成功していると思える。
画面には登場しない“本人“のキャリアを考えると、いくらなんでも…有り得ない話なのだがそこはそれ、あくまでもこの1話目は掴みなのでこれでOKでしょう。
全6話は体感的に5分→10分→15分→20分→30分→40分位だろうか?
段々と話が長くなって行く手法。
はっきり言って、全6話全てが糞みたいな話なのだが。3話目の【エンスト】は2人の男のバトルが激しくなるにつれ、暴力的な話が喜劇的な話に到達する。
続く4話目の【ヒーローになるため】でも、人間の怒りが頂点に達すると「やっぱりやっちゃったか〜!」と、ある種の人間喜劇になる。
身に覚えの有る人にとってはスカッとするやも。
しかしこんな事がもしも日本で起きたら…絶対にあの様な結末にはならないでしょうが!
3話目→4話目と車に纏わる話が続き、共に面白く観れたのだが、楽しく観れるのははっきり言ってここまで。
続く5話目の【愚息】は本当に酷い話だ!
そしていかにも有りそうな話。人間の欲望や愚かさが良く描かれている。
但し観ていてどうしても楽しくは観られないのがやはり勿体ない。
最後の描き方に救いが無いのだ。この作品の中では掴みの1話目を別と考えると、この5話目と2話目の【おもてなし】には救いが無い。いや拒否してしまったのか、それとも何も思い付か無かったのか?
そして映画は最後6話目のに突入する。この話が1番長く、しかも1番ハチャメチャな話であり、1番人間の恐ろしさを表現していると言える。
今結婚式の真っ最中でありながら、人生最大の恥ずかしさを味わうカップル。
人生の最高点から一気に地獄な阿鼻叫喚の世界へと転落してしまう。
途中までは「もういいよ!勘弁してよ!」と観ていて思うのだが。あれですね、全て開き直った人間には完全に勝てないな…と思い知らされますね。
なんだがフェリーニの『8 1/2』のエンディングに於ける馬鹿騒ぎを思い出してしまった。
全ての話で、人間はいかにして怪物に変貌してしまうのか…を描いている様に思える。
但し日本ではどうみても「これは有り得ないだろ〜」とゆう話ばかり。
やっぱり普段お茶漬けサラサラ、漬物パリパリと食し。質素な食事に徹する我々日本人(勿論全ての日本人がそうでは無いが、寧ろ我々日本人の内に秘めるDNA的な意味で)には理解仕切れ無い部分が多く感じた。
それでも、ハリウッドのバリバリCGで固められた大作映画に魅力を感じない私の様な臍曲がり人間には、人間の欲望:愚かさ:恐さ:だらしなさを感じさる本作品はかなり面白く観ました。
但しアカデミー賞ノミネートは納得ですが、受賞出来なかったのもまた納得でしたが…。
(2015年7月30日/ヒューマントラストシネマ有楽町/スクリーン1)