「写真屋から薬局へ・・・」愛するときに話すこと kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
写真屋から薬局へ・・・
町の小さな店という設定が一緒なので、ついつい思い出してしまう。知的障害者の兄インスプと母親の3人暮らしであるイング(ハン・ソッキュ)は、過去に結婚したい女性もいたのだが、兄の存在によって相手の家族に反対されたという苦い経験を持つ。兄に対しては肉親として献身的に世話もするが、遠ざけたい気持ちも感じ取れる。ちょっと前まで療養所にいた兄を自宅に引き取ったという事実が結婚することの諦めをも感じさせるのです。
そんなある日、東大門市場で偽ブランドの衣服を販売する贋物デザイナーのイ・ヘラン(キム・ジス)の一家が近所に引っ越してくる。亡き父の莫大な借金返済を背負い、彼女もまた結婚を諦めていたのだ。出会った2人は飲み語らううちに意気投合し、一晩過ごしてしまう。辛い事情も打ち明けずにいたけど、お互い陰を引きずっていることに共鳴し、傷を舐めあうような雰囲気だったのが印象的・・・原題SOLACEが意味するところだ(邦題ダサすぎ)。
家庭の事情で結婚できないままの2人。関係は持ったものの、そこから先には進展しない仲。不倫関係や過去の結婚話を打ち明けても嫉妬心さえわかない微妙な関係。単なるご近所さんか友人のように互いを気遣うところも痛々しいのです。
中盤、ヘランが風邪をひいて薬を渡したエピソードがあったのですが、その後に微妙な関係のまま別れる場面の心理描写が絶妙だった。処方箋なしの違法な調剤による薬なので代金は受け取れないと断ったのに、数日後にヘランが金を払いに来たシーン。頑として拒むことも出来たはずなのに、それをしなかったイング。再びよりを戻すことになるのですが、このシーンは2人の脆い関係を象徴しているようで、なぜか印象に残ります。
双方に大きな転換期もやってくるし、それを乗り越えることによっていくらでも修復できそうな微妙な関係。その後の2人は結婚できないかもしれないけど、希望を持たせてくれる終わり方もよかった。もちろんインスプとイングの関係も爽やかだったし。ハン・ソッキュ42歳、キム・ジス34歳・・・大人の純愛(?)ってところも素敵です。