「ゆったりと撮られた愛すべき小品。」アリエル王子と監視人 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆったりと撮られた愛すべき小品。
日本タイ国際共同製作です。
ルベール王国の王子アリエル(チャーノン・リクンスラガーン)は、お忍びで休暇を過ごすために熊本に遊びに来ています。
アリエル王子は日頃のストレスから逃げるように、監視人のクリス(セリーナ・ウィスマン)の目を盗んでホテルから逃走し、連れ戻されることを繰り返す。
考えたクリスは、アリエル王子に少しでも自由を感じて貰うために、擬似デートの相手をリサ(伊澤恵美子)に依頼する。
本作は、私の生まれ故郷である熊本で、全編ロケされました。
熊本城、市内のアーケード商店街と路面電車、阿蘇山、そして勿論くまモンも登場します。
なので郷土愛でおひねりを投げる感じで、観てまいりました。
王族のお忍びデートと聞けば、やはり"ローマの休日"が思い出されますよね?本作は、その"王子版inゆっくりしていきないよ熊本"となっております。
南国熊本の人たちは、暖かくおっとーり穏やかです。
あ、私は半分広島の血が入っていますので、こんな感じなんです。すみません(笑)
リサのお母さん役に、石田えりさん。
自宅に来た王子に出したお料理は、"からしレンコン”です。熊本は食道楽ではなく、着道楽だと言われます。他県にくらべ、あまり(有名で)美味しいものがないと思うんです。
リサが不平をいうとお母さんは、「だってからしレンコンは殿様も食べてたんだから」と切り返す。この感じ、熊本の人っぽいです。何事もおおらかなんです。
そんな熊本の人達の笑顔と対照的な、王子の張り付いたいつも変わらない固い笑顔。でもその笑顔が、リサとの別れを実感した瞬間に、少しだけ切なく歪みます。
原題がHand in the Gloveです。
王子は常に手袋をして、一般人と握手をしているのです。でもリサと別れるときの握手では、そっとそれを脱ぎます。
手袋は王子の心のメタファーなのでしょうね。
アリエル役のチャーノン・リクンスラガーンさんは、タイで人気のあるバンドのボーカルのようです。笑顔が、とても印象的でした。
台詞が少なく、物凄くゆったりと撮られた愛らしい小品に仕上がっていて、なんだかほっとしました!そして、ご当地感も満載ですよ。