「クールなドラキュラ」ドラキュラZERO Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
クールなドラキュラ
史実がベースとなっている為か、物語の重みがある。「ドラキュラ」というタイトルの付く作品で個人的にはあまり当たりが無い事が多いと思っていたが、本作はドラキュラ伝説に一切興味が無くとも、私の様にドラキュラ映画は面白くないと勝手に思っていても、普通に楽しめる作品である。100億近い製作費の甲斐もあり、映像も素晴らしく、撮影地アイルランドの壮大な自然と相まって美しくも強い風貌を身にまとっている様だ。
ルーク・エヴァンスの格好良さに加えて終盤の無双状態は鳥肌ものだ。
だが意外にも本編が短く、主人公の葛藤や苦悩がさらっとした印象を受ける。良くまとめていると思うが、展開も早いため感情移入する前に色々と事が進んでいる様だ。せめて120分程の本編にして丁寧に描いて欲しい部分が何点かある。
また、アクションは文句なしの満点をつけたいが、オスマン帝国という強大な敵の活躍が少ない。もちろんそれがメインではないが、中盤で千人規模の兵隊が無双と化したルーク・エヴァンスに全滅させられ、終盤にはコウモリ軍団にやられっぱなしと、やられてるところばかりが目立つ。少しで良いので「キングダム」並の頭脳戦や一進一退の激戦も観たかった。
本作は元々「ダーク・ユニバース」の先陣を切る作品だった様だが、興行的な面を考慮したのかあっさりと無かったことになっている。結果トム・クルーズを主演に迎えた「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」がその代役となった訳だが惨敗。その後「透明人間」も製作されたが、ダーク・ユニバースは水の泡となってしまった。本作も終盤の展開を見てみるとユニバース感ムンムンでエンディングを迎えるが、振り返って見るとユニバースから離脱した「透明人間」の方がクオリティも高く、1つのホラー作品としてしっかりと成り立っている。近年はフランチャイズ化の波が押し寄せているが、何でもかんでもユニバースにすれば良いわけじゃ無いだろう。