オルエットの方へのレビュー・感想・評価
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フランスのバカンスって3 週間もあるんだ
これといって何もないのがバカンス
小津安二郎の映画を観に行った時に、この作品の予告が流れておりました。なんだか16mmフィルムで撮ったような質感に即効演技、同時録音に面喰らいました。しかし今の映画にない新鮮なものを感じました。
70年代初期に撮られたそうですが、古さを感じさせない刻が止まったような映画です。さすがにメイクは時代を感じます。
女友達が湧き合いバカンスに興じるだけの映画かと思いました。しかしジョエルの上司ジルベールが参加するのは予想外でした。偶然を装って近くにテントを張ってるのですがジョエルに気があるんですね。普通ならウザい存在なのですが結構面白い人なんですね。
フランスの海て、こんな風がきついて知りませんでした。どんな些細な音も聞き逃せません。
食材が海の幸以外に、うなぎ、ワッフル、シードルなど食材が豊富なのが驚きです。
うなぎをつかむシーンは、しつこいはずなのになんか可笑しいんですよね。
はじめはホーム・ムービーのようだと思いましたが、どの場面も構図が決まっています。だらだらとならないよう画面の切り替えも早いです。ビーチボールを追いかけるシーンは、いいですね。
同時代の作家をめったに誉めないJ・R・ゴダール監督が、この作品の監督(J・ロジェ)を気に入るのは納得できます。ゴダール「軽蔑」のロケにもドキュメンタリー撮影を許可させています。(今回の特集上映で、その短編があります)
「オルエットの方へ」のお話は、あっさり終わってフランス映画らしいです。ハリウッドだと再会でハッピーエンドになるけど、それがないのがいいです。まさにシードルのような酸っぱい映画でした。
欲を言えばフィルム上映で観たかったです。
新鮮
バカンス映画の難しいところは映画作りはバカンスのようにはいかないところだ
莫大な金と人手がかかっている映画作りは当然緊張するものだし、それは少なからずフィルムに付着する。けれども今作は違った。よっぽど雰囲気の良い現場だったのだろう。レンズの歪み方から望遠を使って遠くから撮っているわけではなく、本当に友達のような距離感で撮られていたことがわかる。
レストアなんか知るかという具合に解像感の低い映像だった。正直苦しいものはあったが、それを跳ね返す女の子たちの邪気溢れる笑い声だった。もう笑うしかなかった。
音は同録とスタジオの併用だったように思われた。
出来事の連続性よりもイメージの音楽を意識した遊戯的な編集は飽きが来ない面白さだった。笑い声を音楽のように使い、無理矢理トランス状態に持っていく荒技には負けた。笑うしかなかった。
ドキュメンタリーのような不器用なズームの使い方はなんだか奇妙だった。彼らは映画の端正さよりも映画の鮮度を大事にしているのだろう。
70点ぐらい。オシャレなバカ騒ぎ
若き三人の女性とヴァカンスを過ごした
すべてが映画的
何かを間違って観に来てしまったカップルが途中退席したくらい何もないようで何でもある。何でもあって何もない、という160分の映画。
しかしこれだけ映画的な道具立てがある中で馬というのはそれだけで超映画的なんだな、と思った。というか、フランスのバカンスはすべてが映画的ということになるのか。海辺の別荘。女友達。サンオイル。ヨット。釣り。魚。料理。そこに馬。
もうスタンダードスクリーンを窓のように眺めているだけなのだけど、馬鹿騒ぎのはじまりと終わりという時間を体感させる。ラストのパリに戻ってのシークエンスをみて、あ、アルフォンソキュアロンは確実にこれを観てるな、と思った。
小学生の描いた他愛ない絵日記を観ているような
中々面白い。
フランス西部のヴァンデ県(コタンタン半島の南側付け根。日本で言うところのノルマンディー半島)のビーチにある別荘でヴァカンス(9月の三週間だけど)を過ごすパリのOL3人のお話し。
3人娘が色恋を多少含めてはしゃいで過ごす(と言ってもかなり健全なんだけど)だけのお話しです。エンディングも、バカンス後の気だるさが残るだけの感じ。
バカンス前のパリでのプロローグとバカンス後のエピローグを含めて、1日毎に話を区切っていて、まるで小学生の描いた他愛ない絵日記を観ているようです。
「今日は1日、海釣りをしました」とか「今日は、親切なおじさんに鰻を沢山貰いました」とか、「今日は海が冷たいので、ビーチで日光浴して過ごしました」とか、断片的に物語は進展していきます。
日毎の割合は均等ではなくて、割愛される日や数秒間で終わる日もあれば、数十分の日もありました。
私には、3人娘の区別がほとんどつかなくてそれには参ったけれど、お話しの理解に影響はほとんどなかった。
私の夏休みは、パンパンに膨張した期待を胸に始まって、とても楽しく過ごすけれど、いつの間にか軽い失望を味わいながら、いつも中途半端に終わってしまう。最高に盛り上がったまま終わるハッピーな夏休みって無いのです。
この映画を観ていると、人生って結局はそんなものだよなーって思います。
祝!4Kレストア化!フランスのヴァカンスを題材にした作品としては頂点的位置付けで今見て瑞々しい映像に溢れる傑作!
2010年に正式な日本公開をされた作品で、製作は何と1969年から1970年に撮影されたので、55年以上前の作品になり女性三人が、少し遅めのヴァカンスに出かけて海辺の別荘で過ごす数週間を瑞々しく上品な短編的スケッチで活写されており、162分の長尺にも関わらず没入出来る。
『アデュー・フィリピーヌ』で注目された監督ジャック・ロジエの長編第2作だが、展開やカメラワークや映像の組み立て方も相まって前作より分かり易く入り易いのが魅力
当時のフランス人達のヴァカンス風景とちょっとした食事描写にも面白味が多くて、ドキメンタリーチックな作劇などもありこの手のディテールに興味がある方にも薦めたい
低予算の16ミリ撮影だが、その機動性を生かしたロケでの映像もあまりカメラが動かない?と思わせて中盤から移動撮影を連発して映像にエモーションのある躍動感を与えて作品も心地よくドライブする。
動きの導入部分の見せ方と編集も卓越していて、晴れ渡る砂浜で観客から見て上手から下手に大きなビーチボールが転がり込むのと同時に下手からジルベールが上手に向かい走りクロスする場面の映像とカット割に唖然としつつ唸ってしまう。
ボートや乗馬の場面も同様で乗り物や移動体を滑るように!または美しく魅せるカットもあり、当然シネフィルでもあるはずのジャック・ロジエ監督はぬかりないと思う
映画で馬を上手く見せると映えると思う(シャレじゃないよ)
出演者の女性陣のナチュラル演技と存在感は魅力的ですが、やはり本作はお邪魔虫的扱いになるジルベール役ベルナール・メネズの可笑しみのある飄々とした存在で、ドタバタをドラマ掻き回しながらも最後に見せる悲しさが抜群で、作中でも彼が抜けたことで気の抜けた雰囲気になるくらい素晴らしい。
でもめげない感じの何と言えないラスト!
ベルナール・メネズは、ロジェ監督の『メーヌ・オセアン』でもナチュラルに頭のオカシイ面子に振り回される国鉄職員役で好演してるが、フランスのキャリアの割と日本では紹介されていない印象で近年人気のあるギヨーム・ブラック監督の『やさしい人』(2013年フランス)でも再び姿をみせ、歳の離れた若い女性にのめり込む一人息子を見守る父親役で素晴らしい演技をみせる。
本作やロジェ監督をリスペクトするギヨーム・ブラック監督の意図的な配役だと思うけど、ジルベールともダブる配役なのは嬉しい。
個人的にはベルナール・メネズが出演してる日本未公開の映画で、イギリスのハマーホラーで活躍したファンの多い名優ピーター・カッシングやクリストファー・リーと共演してる作品もあり拝見したい(カッシングとリーはスターウォーズにも悪役と出演してるので若い映画ファンでもご存知かと)
今回の 4Kリストア版は、元が16ミリ撮影なのでどのくらい4K化された映像が変わったか?に興味がありましたが過去に3回劇場でプリント上映で見たフィルムと比較すると、傷も減り若干シャープな画像になっていて、デジタル化によるものと思う色味も安定してる印象ですが、割と大きめなのは音の面が、クリアになりその点にかなり違いを感じる。
ちなみにDVD化もされているが、高額転売価格(定価が1万3千円なのにAmazonなどの中古で4万以上!新品でなんと!?49万円!!!)になっており(怒)さすがに手が出ませんが、今回の4Kを将来的には配信以外にソフト化して欲しい(とりあえず輸入盤は購入したけど)
近年は前記したギヨーム・ブラック監督のヴァカンスを題材にした作品群が人気で再再評価されている様子で今回も日曜日とはいえ客入りはほぼ満員でした
最初に見たのは2018年6月の北千住のブルースタジオで、2回鑑賞(どちらも観客は三人くらい)して前回の上映が、2019年7月の東京日仏学院(アンスティチュ・フランセ 東京)のヴァカンス映画特集で鑑賞(こちらは満員)
近年に公開されたフランス映画で一番好きな作品で、ロジェ作品でも抜群に面白くてその時代を封じこめて奇跡的に輝く不思議な作品
(人に寄っては退屈に見えるかもしれないけど )
余談ですが本作の日本初公開時の上映権利が10年だったらしい、35ミリプリントのフィルム版もまた上映して欲しい
以前に早稲田松竹さんで、あったデジタルとフィルムの比較上映とか
(参考に映画「ノスタルジア」のフィルムとデジタル版比較と映画『緑の光線』のフィルム版についてを映画.comのレビューでふれてます。)
全てが自然体
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