「コメディのお面を被ったお面主人公映画」FRANK フランク ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディのお面を被ったお面主人公映画
絵面的にポップなコメディ映画かと思わせて、結構渋めの人間ドラマを突然ぶっ込んでくるコメディ映画のお面を被ったお面主人公の人間ドラマ映画。
狂言回し的主人公のジョンは音楽が好きで自作の曲もたくさん作るものの、アップしても反響無し。そんな彼がたまたまメンバーがトラブルで欠けたバンドの代打を引き受け、ライブハウスに行ってみると、そのバンドはでっかいお面を被った謎のヴォーカル、フランク率いるバンドだった。そこでフランクに気に入られ、正式にメンバーとして迎えられたジョンはアルバム作成のためにメンバーとレコーディングに向かう、というお話。
本当の主人公は謎のお面の男フランク。だけど顔を見せないだけでなく謎だらけ、だけどなんだか物凄い音楽へのこだわりがあって、レコーディングも結局1年(!)以上かかってしまったり、実際のレコーディングを始めるまでも大変な時間をかけてわけわからん事をしていたり、と掴みどころがない。
ここが少し怠い。ただ、ゆっくりと色々なことが進んでいくんだけど、終盤の展開につながることがちょっとずつ散りばめられているので、フランクのキャラを探りつつ見続けてほしい。
中盤以降、ジョンのある行為でバンドの運命は急展開を迎えるんだけど、思いが共有できていない人物が小さなグループに入ることで起こる亀裂がどんどん大きくなってく。
ここは意見の分かれるところだと思うけど、果たしてフランク始めオリジナルメンバーは本当に才能溢れるアーティストなのか、それとも内輪でフランクを信仰している変わり者寄せ集め集団だったのか。
私は途中までは前者だと思って観ていた。でも、もしかしたら後者なのでは?とも思える描写もちらちら見受ける。
そうするとこの映画が、才能の違いをイヤというほど見せつけられた持っていない者ジョンの映画、なのではなく、小さなサークルで楽しんでいた音楽集団が、ちょっとした切っ掛けで大きな舞台に引きずり出されてしまったことで、その舞台には立てないことを悟ってしまったフランクの映画、なのかなとも思った。
彼にとっては、元のメンバーと小さな舞台で好きな音楽をやることの方が幸せだと、きっと思ったと思う。そのメンバーと一緒なら、もう仮面はいらない、というラストだったのかな、と思った。
ポップな感じで大変重い人間ドラマだったけど、見ごたえはあった。
ただ、ちょっと起伏が少ないところがあるかも。