湖の見知らぬ男のレビュー・感想・評価
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会う時はいつも他人
カメラは湖周辺から一歩も移動しません。定点観測で野外駐車場が(間違い探しかと思うぐらい)何度も繰り返されます。
「燃ゆる女の肖像」のクレール・マトンによる湖畔の美しい撮影、風にそよぐ木々、逆光がゆれる水面、一方で繰り広げらる生々しいクルージング。
気になったのは、皆から疎んじられる昼行燈のような中年のアンリの存在。監督はこのキャラクターを何故設定したのか?ナンパも泳ぎもしない、一日湖を眺めているだけ。グッドルッキングからは程遠い。フランクと心を通わせますが、寝ることはありません。ゲイクルーズの中にいる聖人のような存在です。
終盤そのアンリがフランクために、決死の行動に出ます。
一方でフランクはアンリの犠牲を無駄にしてしまいます。怖くなり一旦はその場から逃げ出しますが、快楽の記憶を拭いきれず、気の弱さからどうしてよいか分からず、絞り出すように声をあげてしまいます。その声にしがみつくしかないように。
「ミシェル…ミシェル…」
宵闇に溶けていくようなラストがすごいです。
これって「禁じられた遊び」のラストの叫びではないでしょうか。もちろん内容は全く違う映画だし、単にミシェルという同じ名前なだけなのですが。禁じられた=社会から阻害された、遊び=快楽を求めるゲームととらえるとどうでしょう。
劇中の性描写が相当激しい(私は少しうんざりしました)ので、観る前には覚悟が要ることを申し添えておきます。
タイトルなし(ネタバレ)
ある夏の森に囲まれた湖畔。
そこは、男性ばかりのヌーディストビーチ。
若く地元に暮らす青年フランク(ピエール・ドゥラドンシャン)は、しょっちゅう通っているがお目当ての男性は見つからない。
離れた場所で湖を眺める中年アンリ(パトリック・ダスマサオ)と会話するようになるが、その気にならない。
ある日フランクが目に止めたのは、筋骨発達日焼けのイケメン、ミシェル(クリストフ・パウ)。
が、彼にはパートナーがおり、フランクはミシェルと相手が浅瀬で口論し、相手は湖の中で姿を消してしまったのを遠目から目撃した・・・
といった物語で、男性同士の恋愛やら殺人事件などが起こる映画。
主役の青年が車で訪れるシーンの反復など、淡々とした中にもテンポを感じる演出は好感を持てるが、とにかく裸の男ばかりで、生々しい描写のオンパレード。
タイトルロールの「見知らぬ男」は、主役フランクと会話を重ねる中年男性のアンリ。
湖と隣のビーチを眺めるだけで、積極的に関わらない。
その存在は「神」の暗喩か、はたまた、マイノリティの中のマイノリティか。
この会話のシーンなどもかなり良い。
中盤以降に刑事が登場してサスペンス映画風の雰囲気が高まって来、最終的には宙ぶらりんの結末。
この結末も悪くないが、とにかく描写が生々しく辟易してしまいました。
作家性の強い薔薇族映画といったところか。
男性の身体
ネタバレならぬモロバレ。
鑑賞本数が少ないからなんとも言えないけど、女の身体を魅力的に、もしくはあけっぴろげに撮った作品はよく観た。けれど、男性の身体をここまで堂々とあくまで普通に映した作品は初めてだった。
男性の身体って興奮すれば固くなるし、射精もするし、女の身体よりよっぽど感情的。
これが男女なら、あの怪しい男に近づくのは、?が浮かぶのに対して何故か男男だとそうだよなぁ魅力的だろうしなぁと感じるのはなぜなんだろう。
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