「阿部定事件を何倍もすげえ」メビウス cani tsuyoさんの映画レビュー(感想・評価)
阿部定事件を何倍もすげえ
今年観たエンターテイメントの中で屈指の衝撃と爆笑をかっさらった作品。
旦那の浮気に腹を立てた妻は夫の陰部を切り取ろうとする。
しかし、それに失敗した妻は、愛する息子の陰部を切り取る。
その後、妻は失踪。陰部を喪失した息子と父は二人で助け合い生活をしていくのだが、いくつかの過ちを犯した後に失踪した妻が戻ってくる…
こんなストーリーを聞いただけで興味津々なわけだが、この映画はこのとてつもない内容を喜怒哀楽の表情と一部叫びのみで構成されている。
映画「アーティスト」のような劇映画のようなミュージカルようの表情でなく、すべての感情を表情のみで表しているだけなのに実に多弁。
ある意味言葉を使用していないからことむき出しの感情が観客に突き刺さってくるというとてつもない技巧派…
とまたこんなことを書いていると、ちょっと芸術チックな映画かと思いきや、「愛のむきだし」よろしく圧倒的、容赦ない暴力的なパワーに満ちた映画なのだ。
物理的に陰部が切られる痛さ(2回もある)
妻の愛の深さゆえの痛さ。
男ならわかるであろう陰部を喪失した時の自身の欲の処理の仕方と尊厳を失うことの痛さ。
痛さ、痛さ、痛さに絶句してしまう。
けど、なぜか笑ってしまうし、感動してしまう。
実際に映画館では爆笑の嵐、かつ絶句の嵐だった。
日本の園子温。韓国のキムギドクがいれば我々の衝撃欲は今後も満たされるのではないだろうか。
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