「妻の夢は夫の夢。」トランセンデンス ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
妻の夢は夫の夢。
名カメラマンが記念すべき監督デビューを飾ったという本作。
あら、日本でいうところの木村大作?なんて思ってしまったが、
べつに美しい景色を撮っているんじゃなかった。もっと未来の
人工知能系の話で、さらにそこへ人間の意識をアップロードし、
ネットワーク化されると果たしてどうなっちゃうでしょう?という
世界が繰り広げられているSF作品。
ちょーっと、初めから大風呂敷を広げ過ぎちゃった感があり、
所々でアレ?という違和感や後半のダラダラ感は確かにある。
前半~中盤までのウィル(ジョニデ)が死んでからアップロード
されるところまでは、けっこう面白くてドキドキした。
語り部がP・ベタニーってのも最高だ。ナイスなキャスティング。
開発途中でテロリストに襲撃され、致命傷を負わされた夫。
もう助からない彼の意識をせめて彼の開発中のコンピュータに
接続しアップロードすることは可能じゃないか、と妻は考える。
親友であるマックス(ベタニー)に協力を仰ぎ、亡くなった彼の
脳を繋げたところ…何と成功。彼が画面上に浮かび上がる。
タイトルには「超越」とあるが、彼が生前「神」という言葉に反応
していることから、これは世界征服、あるいは人類支配にまで
及ぶのではないか…という恐怖を描く話なのかと思っていると
そういう方向にはいかなかった。もっと純然なる妻への愛情と、
妻の夢であった自然再生を果たすための夫側の努力というか、
それを描いているドラマだった、というのが実際の真相。
SF超大作だと思って期待したマニアは、アレレ?だったかも。
未知のものに対する人間の反応は、確かにこうかもしれない。
ただ、この夫婦が冒頭でやっていたこと(庭のガーデニング)と
マックスがいう「僕はこの夫婦が大好きだった」という台詞から
彼の意識がそういう方向(攻撃)にはいかないよなと思わせつつ、
ハッキリしない展開を見せるので、とっても複雑な印象が残る。
私は夫を失う妻の立場で観ていたので、妻の行動が理解できた。
もしも意識だけでも助かるものなら…とやはり考えてしまうはず。
最後のシーンでは、切なくて泣いてしまった。
(すごいキャスト陣だったけど、やや可哀想な出番態勢だったな~)