「美し過ぎるイザベルは貴方の分身なのかも知れませんよ?」17歳 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
美し過ぎるイザベルは貴方の分身なのかも知れませんよ?
あくまでも映画が描き出す世界観として本作は最高に面白かった!
だが、この映画が描き出すヒロインのイザベルと同じ様な生き方を選んでいる人物がもしも自分の身内の誰かだとしたら、こんなに辛く哀しい現実は受け入れられない気がする。
文学や絵画或いは音楽とは、天才と言われる作家達が人間の奥底に潜む、深層心理を万人に観える形として表現したものを指すのだと思う。
それ故映画は特に総合芸術として、映像や、セリフそして音楽によって、物語の中の人物像に迫り、本質を誰にでも直ぐに理解出来るように表現した世界だからこそ、面白いのだと思う。
あくまでも、そう言う創り物の世界であるから、安心して観客である私達は楽しむ事が出来るのだと思う。
この作品のF・オゾン監督と言えば、公開されて来た、どの作品も全くその時々に於いて作風が異なる事から、同一監督が制作された作品とはいつも考えられないし、常に斬新な世界観で観客を魅了し続けてきている理由も彼の作家としての飽くなきチャレンジャーとしてのバイタリティーが作品のクオリティーを上げているのだと思うのだ。
私は彼の作品が大好きなのだが、彼の新作「17歳」は特に観ていてとても恐い作品だったが、17歳の少女から大人へと成長を遂げようとするヒロインの必死にもがき苦しむ姿にはたとえ現代のフランスの少女の物語であっても、共感するものが少なからず有った。
イザベルと言うこの一見何不自由無く、好き放題に暮しているかに見え、その実、孤独で自信無げな、でも人一倍背伸びをする事で、何とか自分を納得させようと苦しむ、女子高生の彼女の不自由さや、生態が手に取る様に画面に繰り拡げられ、面白かった。
本作はファーストシーンから彼女の好奇心が引き起こす様々な問題と、ラストへの展開迄全編を通して表現されている、若さ故の過ちや、そこから得られる人間の再生の根源的な底力のようなもの迄、どのシーンを取ってもとても哀しいのだが、その哀しみこそが、豊かな時間の歩みに思えてならなかった。
イザベルと弟、イザベルと母、そしてイザベルと義父や友人達、多くの彼女のお客や初体験の恋人との関係性迄、どのシーンを観ても無駄なカットも無いし、カメラワークもファアーストシーンから、登場人物のキャラが良く表現された映像で良かったと思う。
そしてこの映画のラストシーンもイザベルの純粋さが表現されている良い終わり方をしていたと思う。女心と言うか、女性の美しさや、恋愛感情や、愛する事の本質を描かせれば、やはりフランス映画は最高に面白いよね!何故なのか?日本映画には中々出せない、味の有る、素晴らしい人間の輝きが嬉しい作品でしたね