「痛快というか、呆れる、というか」選挙2 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
痛快というか、呆れる、というか
東日本大震災、福島の原発事故に動揺する春、桜が咲く中、反原発を軸に個人候補、無所属候補として、山内さんが再度立候補、ということで、自民党小泉政権時の落下傘候補として初出馬のときの「選挙」との対比がとにかく見どころ。
まずは自民党スタイルに塗れざるを得なかった一挙手一投足に至るまで党の先輩関係者にご指導いただき彼としての主張はなんだかわからないまま、党の力で当選していく様子が描かれていた。今回は応援してこの人に投票して!次回は元の支持、後援候補に戻ってよいから と、自民党の各支援組織や講演会を回り先輩方、党本部が集めた票で当選、幼稚園の運動会などでも。来賓スピーチする自民党議員、、地方選挙はこのような仕組みができておりなるほど自民党が勝つわけだ、と納得した。山内さんより山内さんの妻さゆりさんの方の戸惑い、反発が普通の感覚で、逆に与党ががいかに当たり前の感覚を持ってないかを実感。まだ選挙には金がかかる、大政党には金があるがそれでもふつうの暮らしをする人が選挙に立つのは大変そうでもあった、まあそれは驚くことでなく周知だが。
選挙2では、独立系完全無所属として、独自のスタイル独自の主張を貫きほとんどお金を使わず、地震は天災だが原発事故は天災ではなく今日々放射線量を確認しながら過ごしている、他の候補者はそのことには触れないが通常の2倍以上の放射線量の中で暮らし、食べ、子育てをし、なんとなくピリピリしている当時の状況がよくわかる。本当は気になりながら 思考停止状態を装い、ピリピリしている人を排除したり馬鹿にしたり批判したりしがちだった当時のことが蘇る、
選挙2、まずは山内夫妻の成長ぶり、というか本当に議員生活を経験されて、またお子さんが生まれ子育ての中原発事故という事態の中、真の山内さんが立ち上がる姿に冒頭からおおっとなる。お金の心配としがらみや悪習踏襲などがない上、今では落下傘候補ではなく宮前区にくらしている地元の一区民として、自分の考えをしっかりお持ちになり、個性を出して候補者として活動する姿、声も表情も語り口も別人で愉快。かたや前作ではあますところなく地方議員選挙の裏側を見せてくれた尊大な自民党議員陣営達が、今回も本性本音をみせてしまうところがまた面白いし、想田監督もキャストの一人として尊大議員たちと渡り合う姿も見られる。
謝るならちゃんと謝って、謝り方なら小学生でも知ってる、そんなのは謝罪ではない、と想田監督に詰め寄る自民党浅野某陣営とか、ほんとに苦笑、噴飯。今から10年前のこととはいえ、まさに、謝罪の仕方を知らない昨今の自民党政権にそのままお返しする言葉。
選挙も、選挙2も、さおりさんがふとつぶやいたりする言葉見せてくれる表情が、普通の感覚市井の人の思いだろうと思うし、少なくとも自分は共感する。山内さんが争点とした原発問題も当時の危機感としてとても共感する。それにこのご夫妻の子育てがとても素敵で、選挙2は、夫妻2でもあるな。
想田監督作品は、普通の会話や風景、シーンなんだけど、クスッとしてしまうところあり、お人柄、天性のセンス。
自民党部分はマジで冷笑してしまうところありなんだが。
とても貴重な記録。二つセットで、若い世代が見られる機会がたくさんあれば良いと思う。想田監督ありがとうございます。