劇場公開日 2014年2月22日

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「堕ちても終わりじゃない」東京難民 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0堕ちても終わりじゃない

2017年2月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

これが佐々部清監督作とは驚いた。
とにかく、重く、苦しく、後味悪く、嫌な気持ちにさせられる。
間違ってもこれまでの佐々部作品のような人情味のある感動作を期待すると“どん底”を見る。

いい加減な大学生活を送っていた修。
その終わりは突然に。
父親が借金作って失踪、それによって学費が随分前から未納で除籍処分に。

ここから始まる修の転落人生。
アパートを追い出される。
ネットカフェ難民になる。
日雇いのバイトを探す。
警察に職質される。逮捕される。
街で声をかけられた女に連れて行かれたホストクラブで騙され、高額の支払いを要求される。
そのホストクラブで働かせて貰う。
…そして最後はホームレスになる…。

ネットカフェ難民、日雇いバイト、ホストの世界、貧困ビジネスと言った日の当たらない社会の暗部の実態。
格差社会、組織権力、そして金、金、金の社会の不条理。
主人公の転落人生を通して、それらを非情にあぶり出す。
主人公を見舞う不幸の連続は映画的展開でもある。が、
人間、何をやっても上手くいかない時はとことん上手くいかない。
人間、堕ちる時はとことん堕ちる所まで堕ちる。
少なからず自分も経験した事あったので骨身に染みた。

修の転落人生の中で、ホストクラブ時代は得るものもあった。
友と呼べる存在も出来た。
看護師の茜が自分指名の常連客となり、相思相愛に。
この茜は一見ピュアで清楚な女性に見えるが、ホスト通いで借金を作り、男に貢ぐ哀しい女。
結局は“恋愛”も金で得たもの。
ある金のトラブルで友が非常にヤバい事態に。
金以上のものの為に修が取った行動に救われた思いがした。
幾ら金があって無情な人間になるより、情に流される負け犬のままでいい。

社会の底辺で喘ぐ人々。
人生の負け犬と見下される。
終わったような自分の人生。
でも、
堕ちて堕ちて、堕ちる所まで堕ちた時、改めて気付く。
人生、まだ終わりじゃない。

決して好感を持てる人物像ではないが、次第に共感せずにいられない修役の中村蒼もさることながら、大塚千弘。
ヌードや大胆な濡れ場も披露し、妙にエロい。
彼女が長澤まさみの片割れの小美人とは気付かなかった!

近大