二流小説家 シリアリストのレビュー・感想・評価
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風が止んで、時が止まる瞬間、そこを押さえる
映画「二流小説家 シリアリスト」(猪崎宣昭監督)から。
「ミステリーサスペンス」と紹介されていたこの作品は、
どこかに問題を解決するキーワードがないか、と
メモをしながらの鑑賞となったが、なかなか難しかった。
作品の中で、殺人犯の死刑囚・呉井大悟が、
なぜか、小さい頃の記憶として写真について語るシーンがある。
「一番大事なのは、自分の求める何かが現れるまで、じっと待つこと。
風が止んで、時が止まる瞬間、そこを押さえる。
最初に俺はそれを教わった」と。
その部分だけが、妙に印象に残り「気になる一言」とした。
特に「時が止まる瞬間」という感覚が、素敵だなと思う。
「風が止んだ瞬間、そこを押さえる」でもおかしくないのに、
写真は常に流れ続けている時を止める力を持っていると言いたげだし、
だからこそ、写真の想い出は色褪せない、とも言えそうだ。
インパクトがある景色であればあるほど、その瞬間に戻れる気さえする。
殺人犯人が「殺した女性の首なし写真を残す」感覚は理解できないが、
わざわざ写真を撮るという心理の中に、そういった「時を止める」ことに、
何かしらの意味を求めていたのかもしれない。
この心理描写を知るには、原作のデビッド・ゴードンの同名小説を
読むしかないのかなぁ。
でも、謎が解けて犯人判っちゃったし、微妙な選択だな、これは。
二流作家が見せる一流の根性
原作はエドガー賞の処女長編賞候補作。
日本でも『このミステリーがすごい!』『ミステリが読みたい!』
『週刊文春ミステリーベスト10』といった賞で1位に選出!
と、鳴り物入りで公開された本作だったけれど、
いくら原作本が面白くても、小説と映画とでは勝手が違う訳でして、
物語の舞台を米国→日本に移した時点で色々と弊害も出る訳でして、
そういう″翻訳″過程での食い違いというか噛み合わせの悪さ
みたいなものを終止感じてしまう作品だった。
殺人鬼・呉井が赤羽を選んだ理由の分かりにくさ、
中途半端なタイミングの襲撃の数々(そもそも銃刀法違反)、
突然スゴいドライビングテクニックを披露するヒロインなど、
随所でスジ運びに違和感を感じたが、それ以上に違和感を感じたのがキャラクター。
いや、上川隆也は流されっぱなしの気弱な感じ、それと表裏一体の
優しい雰囲気が良かったし、武田真治のナルシスティックな
劇場型犯罪者っぷりも、やや大袈裟とは思いつつ楽しかった。
だがそんな役者の頑張り以前に、なぁんかキャラクターが
日本人とは微妙にズレてる気が。
ハイテンションでやたらと演出めいている犯人とか。
叔父のマネージャーを自負する商魂たくましい女子高生とか。
ああそうだ、いくら自分が崇拝する男の指示で会ったとしてもねえ、
自分の妄想を他人前であんなペラペラ喋る女性なんているかねえ?
まあそこは主人公もドン引きしてたか(笑)。
例のおじさんが連続殺人に紛れて妻を殺していたという終盤の
ドンデン返し(?)もなんだかなあ。
ハッキリ読めてはいなかったが、おじさんが初めから怪しさ満点だったし、
そもそも連続殺人と比べてインパクトが弱すぎてあまり衝撃を受けず。
数値で言うと 48″へぇ″くらい(ネタが古い)。
あとはね、″一流″の殺人鬼とその母の関係を描くなら、
″二流″の主人公と母の関係をもっと掘り下げて
主人公と殺人鬼の共通点/差異を際立たせるべきだったと思う。
一流でも、自分の才能を母と自分の為にしか生かさない男。
二流でも、自分の才能で多くの人を喜ばせたいと考える男。
この二人を対決させたのはその対比の為だと思えるのだけど。
さて、ここまで全然誉めてないですが、
ミステリーとしての″屋台骨″がやっぱりしっかりしているからか、
引き込まれる点が随所にあるのも確か。
呉井の撮った女達の写真が……とか、死んだ筈の母親が……とか、
身を乗り出すような展開もちらほら見られるし、
真相が見えてくるまでの過程はけっこう面白い。
前述のように、母と子の物語としても深みを感じる。
それに終盤、赤羽の放ったあの台詞も心に残っている。
「あんたと違って僕は二流でも堂々と生きてやる!」
あの台詞にはグッときた。
うだつの上がらない作家が初めて見せた意地。かっこよかった。
世の中で一流と言われる人間なんてほんの一握り。
二流な僕らは二流なりに、一生懸命生きていかなきゃだもの。
この物語で一番言いたい所って、そこだったのかなと思っている。
ん? 誰だ、いま「お前は三流」って言った奴はッ(←被害妄想)。
以上!
鑑賞しながら、『ああ原作は確かに面白いのかも』とか、
『演出や編集次第でもっと面白くなったかも』とか、
色々勿体無いと考えながら観ていた。
この原作、いずれ本国アメリカでも映画化されるのかしら。
そっちもいつか観てみたいっすねえ。
〈2013.6.16鑑賞〉
二流鑑賞家より。
「このミステリーがすごい! 2012年版(海外編)」
「週刊文春ミステリーベスト10 2011年(海外部門)」
「ミステリが読みたい! 2012年版(海外篇)」
これら総てが第一位という三冠を達成したD・ゴードンの
処女作らしいのだが、もちろん原作は読んでいない^^;
それにどうしてそんな大作が日本で映画化されるのか?も
大いに謎だったんだけど、そのあたりも特には突っ込まず。
わ~楽しみ♪というばかりで観に行った。
個人的な感想になるけれど、このタイトルはとてもいい。
でも、鑑賞後に著しく思ったことは「二流演出家」だった。
どうしてそんな面白いミステリー小説を
何が悲しくてこんな構成にしてしまったのだろう。
あまりの稚拙さ加減に、確かに私も言葉を失った。。
原作者の一言をどこかで読んだ。
「こんなに雑なストーリーを読んでくださり…」みたいな
出だしであった。あらー^^;そうだったの?
確かに処女作というからには粗削りな部分が多いんだろう。
でも賞がとれるくらいなんだから、つまらないとは思えない。
先日の「リアル~」もそうなんだけど、
こういうのはほぼ、監督の手腕に握られているといってもいい。
面白い話をより面白くするのも、
つまらない話を何とかして面白く持っていくのも。
だけどその役目を果たせずにこうなったものはどうしたらいい。
勿体ない…勿体ない…と、オバケが出そうなくらい呟いた。
一応ミステリーなので、ネタバレは厳禁なんだけど、
つまらない。なんて書いた時点でネタより選択の方に目がいく。
…観るべきかやめるべきか。(いっぱい悩んで下さいませ)
主人公・赤羽(上川)のキャラ設定に謎が多く、
(普通は主人公の生い立ち~現在を分かり易くするもんだけど)
そこへ犯人・呉井(武田)のおかしなキャラ設定が重なり、
さらに弁護士・前田(高橋)の強烈な個性がぶつかってくると、
すでに冒頭で何が言いたいのかワケが分からない状態になる。
そもそも同居?なのかよく分からない女子高生、アンタ誰?
いきなり登場する人物が、いきなり威勢のいい台詞を吐き、
次のシーンでは、突如としていなくなる。これの繰り返し…。
ホントに勿体ないくらいの名優たちが出ているというのに、
ナンなんだ…?ナンなんだよ…?感が増長、混乱してくる。
…おっといけない、
肝心の事件の方はどうなってるんだ?赤羽が追われている?
だったらなんでそんなに自由に走り回っているワケ?
あー。疑問。難問。大混乱。一体構成はどうなってるんだー。
自分の頭が二流なんだろう、と仕方なく思い始めるものの、
おかしい作品でも、面白けりゃ評価が上がるものだってある。
それとも違うんだな、これは。
こき下ろして申し訳ないけど、とにかく今作を観る時には、
唐突に登場し、唐突な意見をいい、唐突な行動に出る人々を
決して画面から排除せずに、温かく見守ってあげて下さい。
それがあとで、あら~(爆)。ってことにはなりますから。
それが溜息であろうと、納得であろうと、今作は終了しますが。
ちなみに武田君のハジケっぷりは確かにイイです。
そんなにビックリするほどの演技ではないにしろ、楽しめます。
(二流とかB級ってそんなに悪い言葉じゃないよ。要は内容だから)
熱演は見応えあり
ストーリーは面白かったし、俳優さんの熱演は見応えあったと思いつつ、あっという間に印象が曖昧になってしまいました。
傑作ミステリーということにこだわって、楽しみ損ねてしまったのかな。話のスジばかり追ってしまった。
でも実のところ、配役で当たりをつけて観ていたら、どっちもその通りだったのは拍子抜け、難しいものです。
そうするに至った心情が深く語られないのは、海外作品が原作だからでしょうか。
新人弁護士や元カノ編集者の存在は、なかなか効いてたと思いました。昭和の優等生っぽい少女も、彼女の孤独や恋心がもう少し滲んでいたら、もっと活きていたと思いました。
映画初主演という上川隆也は、感情の起伏に乏しい赤羽を上手く演じていたと思います。赤羽と呉井の最後の対決では、赤羽の表情があまり見えなくて残念でした。ビックリ顔以外の、数少ない見せ場だったのにね。
呉井を演じた武田真治の、赤羽に向ける狂気と吹っ切れたような端正な姿、見事でした。
特別2時間ドラマスペシャルで放送したら、高視聴率獲得出来るかもな~?
物語全体から感じられる作品の香りは、やはり翻訳ものミステリーの匂いが出ていた。
この作品の監督、猪崎宣昭氏は、日活で腕を磨いた斎藤光正に師事していたと言う。そしてその斎藤光正は今村昌平に師事していた。その今村昌平は誰の下で働いていたの?と言えば、邦画界の神様、小津安二郎の助監督を務めていた人である。4代も先になると、残念だけれども、本編であっても、そのテイストは2時間ドラマのテイストになってしまうのだろうか?
それとも、猪崎宣昭監督はTVでの現場がもう長過ぎて、画作りがTV様になってしまったのだろうか?
私は、TVが面白くないので、もう20年程ろくに見ていない。だが、子供時代は、TVを未だ沢山見ていた。その頃の思い出の作品の殆んどが、斎藤光正監督の作品であった。
斎藤監督も本編を監督しているが、晩年はTVが多数を占めていたので、その関係で、やはり猪崎宣昭監督も、初期の頃は本編の助監督もしているが、その後の仕事の殆んどが、TVの監督作品が大多数を占めている。
確かに、猪崎宣昭監督と言えば多数の時代劇から、2時間ドラマを手掛ける、TV界の大御所監督だと言う事は歴然としている。だからこそ、この作品は敢えて、映画館で掛けなくても、TVの特別2時間ドラマスペシャルで良かったのではないかな?
この作品をもしTVで放映していたら、きっと高視聴率が取れたに違いない。凄く残念だ。
話は少し横に飛ぶが、最近評判の「奇跡のリンゴ」でも「私達はどうして、こんなに貧乏しているのに!」と無農薬リンゴ栽培を諦めかけていた父親に、詰め寄る娘が何故か、可愛いオベベを着ているし、キルティングの超可愛らしいトートバックを学校に持って通っていたのが、日本映画界のリアルの無さで、呆れ果てるが、この本作も本篇であるならば、もっとリアルを追求して貰いたかった。
猪崎監督は呉井を演じる武田真治の芝居がよほど信じられないのか、それとも彼の心理状態を描き出すのに、異なる衣装を着せかえる事で、彼のエキセントリックなその時々の心理感覚を出そうと冒険を試みたのだろうか?
木下恵介監督も様々に冒険的、実験的映画を創作しているので、何も実験的映画が悪いとは言わないけれども、本作の呉井を描く場合はもっと別の演出力で、呉井を見せて欲しかった。呉井の本心、この完全なる異常者とも言える、呉井の核心に迫る心理を映画なのだから、焙り出してほしかったのだ。
原作を通読していない私には偉そうな事を言う資格は無いのかも知れないが、原作的にはそんな犯罪者達の、微妙な心理が巧く描かれていたのではあるまいか?
さもなければ、ミステリー大賞などに選出される作品と成り得る訳が無い。ましてや、駄作なら、日本と言う海外で翻訳出版される筈も無い。
2時間ドラマなら、最高の顔ぶれだ。上川隆也を折角出演させているのだから、もっと丁寧に彼の心理状態も対比させて描いたら、最高に面白かったはずなので残念でならないな~
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