映画監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きてのレビュー・感想・評価
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観るとトー監督の作品に触れないではいられなくなる一作
香港映画で足場を築き、その後ハリウッドなどに活躍の場を広げ、世界的な名声を獲得した監督、俳優は決して少なくありませんが、ジョニー・トー監督は間違いなく香港を代表する映画監督でありながら、「香港で映画を撮る」ことにこだわり続けた映画人でもあります。
そんな、香港映画ファン以外には知る人ぞ知る存在、かも知れないトー監督の業績と作風を、本作は端的にまとめています。映画監督という存在を深く掘り下げて探求し続けているイブ・モンマユー監督の視線は、トー監督に寄り添う場合もあれば分析的でもあって、その距離感の取り方が作品全体をコントラスト豊かなものにしています。
作品解説は実際の映像も含めているため分かりやすく、例えば『エグザイル/絆』(2006)という作品を取り上げた場面では、トー監督がこの作品で、垂直の位置関係をアクションに取り入れることに並々ならぬ執念を見せていたことを明らかにしていきます。
さらに作品全体にわたって、真下を捉えたカメラアングルを多用するなど、観客が上下感覚をそれとなく意識するような細やかな演出を施していることも。
荒っぽい香港ノワール作品という体でありながら、その根底には繊細な創意工夫がある、とトー監督の演出術の本質を浮かび上がらせています。
観終わった後は、とにかくトー監督の作品を観たくなる一作でした!
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