「良かった!!」クロユリ団地 Mさんの映画レビュー(感想・評価)
良かった!!
「孤独」をテーマとしたこの作品。明日香や笹原、ミノルなどの登場人物それぞれの「孤独」が描かれている。
物語前半で感じるなんとも言えない違和感の数々。朝しか居ない家族。異様に若い両親、幼い弟。同一画面に映らない明日香と家族。毎日繰り返される同じ会話。明日香がつけている止まった腕時計。何度か映されるダンボール。隣の老人の部屋にある遺品。それにはそれぞれ意味があり、その違和感の正体を知った時鳥肌がたった。
予告の冒頭で流れる不気味な鼻歌、それが使われているのは最後の場面のみだが私的にとても頭に残り、映画館から帰る途中頭の中で流れていた。
出演者の演技についてもとても良かったと思う。
心が壊れていく主人公二宮明日香を演じた前田敦子。熱演だった。本映画での彼女の演技の評価が高いことは聞いていたが、正直予想以上だ。「孤独」や「罪悪感」を抱える1人の少女に完全に入り込んでいて、私自身そんな彼女に感情移入し、悲しく寂しい気持ちになった。
恋人を失った(まだ生きてはいるが)笹原忍を演じた成宮寛貴、遊んでいる間の事故で命を落としたミノルを演じた田中奏生。それぞれいい演技をしていた。
「クロユリ団地」はただ怖いだけではなく、登場人物の「孤独」を感じたり、細かいところまで観たりすることで、より楽しみ感動できる作品だと私は思う。今までのホラー映画とはなんだか違う新しいホラー。ホラー好きの人はもちろん、苦手な人にも是非観てもらいたい。
一度観てよくわからなかった人ももう一度観てみることをおすすめする。真実を知った上で考えながら観ることで新しく発見できることが沢山あるだろう。そのときは新たな恐怖を体感できるに違いない。
出演者や、ネットの感想で観るか観ないか決めるのはもったいない。観る人次第でたくさんのことを感じられ、学ぶことができるはずだ。この恐怖を大勢の人に味わってもらいたい。